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スティーブ・ジョブズー偶像復活
ジェフリー・S・ヤング/ウィリアム・L・サイモン/著 井口 耕二/訳
Jeffrey S. Young / William L. Simon
ISBN: 4492501479
出版社: 東洋経済新聞社
価格: 2,310-円(税込)
すでに iPod という名前は「携帯デジタル音楽プレーヤー」と同義となっているかのようである。この年末をひかえてのAppleの布陣は盤石なもののように思える。それがどのような結果を生み出すのか興味はつきない。
それを率いるのがスティーブ・ジョブズ、1955年生まれの50才だ。
そのカリスマ性と毀誉褒貶の30年、AppleII によるパーソナルコンピュータの創造、Macintosh の成功と挫折、そして、iMac で復活、iPod, ITune の成功、その全てが語られているのが本書だ。
まぁ、とにかく最近の本じゃ、一番厚い、35mmで500ページ以上もあるのだ。
この第一部の表題は「沙羅双樹の花の色」とある。原文は "Flowering and Withering" とあるから、平家物語の冒頭「........沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらわす........」、栄枯盛衰というわけだ。原題の「咲いて、散って」より、なかなかでありますですね。
まずは、二人のスティーブ、ジョブズとウォズの AppleII の成功物語だ。
そこにいるジョブズは、今、新型 iPod を自らプレゼンテーションするちょっと頭が薄くなったジーンズの中年男とは似ても似つかぬ、なんとも鼻持ちならないいやな男なのだ。
絶対、友人になりたくないような奴なのだ。菜食主義者にして、風呂にもはいらず、そんなヒッピーが、大成功を収める、そして、尊大、冷血とまで言われ、次にはその自分が作った組織から追い出される。
はてさて、その次はどうなるんだ。まだ、スティーブ、ジョブズは30才なのだ。
第二部は「一から出直す」、NeXT の新しいコンピュータ世界から、ジョージ・ルーカスから買い取った CG の組織が、Pixar というアニメーション制作の世界へ繋がっていく。このあたり、ジョブズにとってコンピュータからはみ出していくのが面白い。彼の二つの組織、NeXT、Pixar ともそのハードウェアを捨てて、ソフトウェアを作り出す組織として生き残っていくのだ。
それは、新しい OS が必要であった、彼の古巣 Apple への復帰へとつながってくる。
第三部「未来を編む」、偶像 iCon となった、スティーブ・ジョブズ、彼はインターネットに活路を開く、iPod、iTune そして ITuneMS へと広がる。今、壇上" One more thing... "とプレゼンテーションする彼がいるのだ。
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本書のプロローグは、2000年のマックワールド・エキスポでの光景で始まる。
ジョブズがApple社の正式なCEOとなることを発表した時の聴衆の熱狂、それはジョブズ自身の喜びであった。彼は初めて、「アップルとはチームスポーツなんだ」と語る。そして一聴衆として会場にいたウォズにとっても、同じく、喜びであったのだ。
そこから話は始まるのだ。
本書と共に、この本人の語った彼の半生を聞くべきであろう。
● aki's STOCKTAKING: 'Stay hungry. Stay foolish.'
AERERA 2005年11月21日増大号を買い求めた。「ジョブズになりたい」なる記事を読むためなんだ。
ジョブズ成功の5原則........
● 決断は素早く
● エンターテイナーであれ
● 細部にこだわれ
● 過去にとらわれるな
● つねに理想を掲げよ .........だって。こんなの突然始めようなんて....まぁ、突然始められても困るよなぁ。
大谷(和利)さんのお話が説得力あり、だな。
「ジョブズは一貫して、世間の人よりも先を歩いている。昔は、彼が先を行き過ぎて、ほとんどの人には彼の背中が見えなかった。でも、今は違う。多くの人は彼が先を歩いていることがわかる。そして、それについて行こうとする。
ようやく時代がジョブズとシンクロしてきたのです」
五十嵐さんの MADCONNECTION にこの本についての記事がエントリーされた。
● MADCONNECTION: iCon
そう言っていただけると、訳者冥利につきますm(_ _)m
私も、いい本にかかわることができてよかったと感謝しています。
井口さん、はじめまして、こんにちは。
あんな大部な本を、こんなにすばやく翻訳し、読めるようにしていただいたことを感謝いたしたく、トラックバックさせていただきました。
昔からのAppleのファンであり、Whole Earth Catalogに大きな影響を受けた私としては、最近のジョブズの話はうれしくてしょうがないのです。
ご紹介いただいた本の翻訳者です。TBをたどってきました。
たしかに、とにかく厚い本ですよね。出版社のほうでは厚すぎて売れないのではないかという心配もしたようです。
「沙羅双樹の花の色」は、見た瞬間、これしかないと浮かんだ訳でした。意味内容と表面的な言葉と伝えたいニュアンスと、すべてがぴったりと思える訳語というのはなかなか見つからないものなので(単語レベルのズレは、文全体や前後関係で細かく修正していくことになります)、このような訳が浮かんだときはとてもうれしいものです。お褒めいただき、ありがとうございます。
大谷(和利)さんのお話というのは、本の最後、エピローグにあるジョブズの言葉、「いわば、どこかに行こうと川をわたらなくても、川の向こう側がこちらに来てくれたようなものだ」というものに通じる気がしますね。
Posted by: 井口耕二 a.k.a. Buckeye @ December 1, 2005 11:02 AM私も昨日、読了しました。
Posted by: iGa @ November 16, 2005 10:45 AM