040112

Macintosh マッキントッシュ登場/2

Apple

Happy birthday! Mac.gif

1984年1月24日の Macintosh マッキントッシュ発表は日本でも行われた。午後1時ホテル・オークラ、その記者発表にでかけた。その時のレポートは、できたばかりの建築系コンピュータ雑誌/月刊アーキソフト archi soft にレポートした。

まだ本体を手にする前で、理屈ばかり先行しているが、20年後の今になっても、そんなに間違ってはいないと考えている。そのまま再録することにする。

Macintosh のメモリーは128k、512kになるのはちょっと先、1Mなんてずっと先、夢のような時代だった。1GなんてのはSFの時代だ。でも、9インチの白黒モニターの中に GUI(Graphical User Interface)を手に入れ、72dpi のプリンターでも、WYSIWYG(What You See Is What You Get)を僕等は初めて手に入れたのだ。


アーキソフトNO.8 1984年5月号 所収
建築家 秋山東一氏の[MAC]レポート ”マッキントッシュ”登場

パーソナルコンピュータの革命児と言われるアップル社の「マッキントッシュ」が1月24日、全世界同時発売された。パーソナルコンピュータへの新しい回答と言われるMACの基本コンセプトとは何か?どのような提案をしているのだろうか?
建築家・デザイナーをメンバーとした活動的グループ、クロックワークアップルの代表である秋山東一氏にMACの持つ意味などを中心にレポートをお願いした。
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マック登場

1月24日、アップル社は、ついにあのウワサのマッキントッシュMACを発表した。3年程前からアップル社は、Lisa, Macintosh のコード名で新製品を開発していることはよく知られていたが、昨年1月に Lisa, IIe は発表され、今回、残されていたマッキントッシュが、ついに我々の前に明らかにされた。
アップル社は1977年、AppleIIを発売いらい6年あまり、その豊富なソフトウェア、周辺機器の多用さによってパーソナルコンピュータの世界をつくりだしてきた。6年間、何らハード的に変更のないマシンでありながら100万台あまりも作り出され、アップル社は名実ともに世界最大のパーソナルコンピュータ専業メーカーとなっている。2人の青年によって始まったアップル社のサクセスストーリーは一つの神話となってしまった感がある。そんなアップル社、AppleII のパーソナルコンピュータの世界も、1981年、米国IBM社のパーソナルコンピュータ、ザPCの登場によって大きく変わってきた。IBM社のパーソナルコンピュータ市場への強力な組織力によって、最近ではザPCはアメリカでのビジネスにおけるスタンダードになったと云われるまでに成長し、アップルのシェアを追い越し、アップル社に対する大きな脅威となってしまった。昨年末にはIBM社はPCジュニアといわれる下位バージョンを発売、アメリカの他のパーソナルコンピュータ・メーカー、日本のメーカーもIBMコンパチ路線へと変換しつつあった。
そんな状況の中で、昨年の Lisa, IIe に続いて、その間を埋めるマッキントッシュにアップルの戦略的次期マシーンとしての大きな期待と興味がもたれてきていたのであった。
ついに、そのマシン、マッキントッシュが我々の前に姿を現した。
それは我々にとって、いろいろと予想されてきたものとは大きな違いはないと同時に、予想以上に今までのパーソナルコンピュータとは異なったものであった。そして、アップル社がいつも表明してきたパーソナルコンピュータの思想・哲学を、ますます大きく実現したものであるように思える。アップル社の「低廉で簡単に、誰でも使えるパーソナルコンピュータ作りを目指し、さらにはコンピュータを使っているという意識すらもなくしてしまう」という、新製品に対する考えを大きく前進させたのがマッキントッシュといえる。
AppleIIを作り出し、アップル社を創り出した2人のスティーブの一人、アップル社の会長のスティーブン・ジョブズは自らマッキントッシュ開発プロジェクト責任者として指導的役割を果たしてきた。彼は次のように語っている。「Lisa のテクノロジーは、全てのパーソナルコンピュータが将来たどる道を象徴している。マッキントッシュに実現された高性能と低価格は、Lisa のテクノロジーを多くの個人の手にもたらすことを可能にした。AppleII がパソコンの世界で初めてのスタンダードとなったようにマッキントッシュが次の新しいスタンダードとなることを期待している。」

マッキントッシュとは

マッキントッシュについて、そのハード上のスペックから説明することほど意味のないことはないだろう。ハード上のスペックは、その結果であって、その目的ではないからだ。マッキントッシュはモトローラの6800、8MHzのCPUを使っているということ自体、まったくマッキントッシュを説明したことにはならない。それはただの結果的な様相でしかない。
マッキントッシュを簡単に表現すれば、ビットマップ・ディスプレィ、マウスを持ったポータブルな個人の「道具」というのが適当であろう。それは「これはコンピュータである」ということ自体を無意味な言葉にしていると思えるほどなのだ。それは、ハードウェアの技術からの結果というより、まさしくソフトウェア、それも技術としてのソフトウェアというよりも、それは哲学、あるいは思想の結果、それを現実化した一つの実体「道具」というものなのだ。
マッキントッシュは Lisa でおなじみになったビットマップ・ディスプレー、そしてマウスを持っている。モニタ上のアイコンといわれる”絵文字”をマウスによって選択することによって操作される。画面上のテキスト、グラフィックスには何らの区別はない。その文字フォント自体、自由に選択しえる。そしてウインドと呼ばれる機能によって画面上の複数の窓によっていろいろなデータを一緒に見ることができ、一つの画面上で並行処理ができ、処理した結果を一つの結果にまとめることができる。今までコンピュータを使うのに必要とされた複雑なコマンドを覚えたり、複雑な操作に習熟することを全く不要にしてしまったといえるであろう。
スーパーパーソナルコンピュータ、Lisa の大容量のメモリこそないが、その高速で高度な処理能力をもった弟分といえる。そして Lisa にはないポータブルという簡便性をもち、低価格という特長を持っている。
だれでも使えるとおうマッキントッシュは、その細部まで気を使った設計がなされている。そのマウスは他社のマウスと違って一つのボタンしか持っていない。それは複数のボタンによるマチガイ、押しマチガイが始めからありえないということななる。本体に内蔵された3.5インチのディスクを400kという大容量を持たせながら、コンパクトでその完全なパッケージは今までのフロッピーディスクの使用に際しての気苦労から開放してくれる。
ポータブルなコンパクトボディながら、9インチの白黒ディスプレー512×342ピクセルのビットマップディスプレー、そして前述の3.5インチディスクを内蔵し、インターフェイスはマウス、RS232C、RS422、外部ディスク用、音声出力端子を持ち、今後の発展に対して十分な配慮がなされている。最初からマックライト、マックペイントという二つのアプリケーションソフトが付属しており、英文ワープロおよび、マウスによる絵図作製を可能としている。2月末よりアメリカでは発売(2,495ドル)となるが、それと同時にアップル社および多くのソフトウェアハウスより各種のソフトウェアの発売が予定されている。日本では3月末より69万円前後で発売されるが、今秋めどに日本語版を、アップルジャパンおよびアップル社で開発中であり、日本での実際的な使用環境を大きく前進させるものと思われる。

マッキントッシュのフォーム

マッキントッシュの外観は、いかなる予測の上にも考えられないような形をしている。
キーボードを別にして、9"モニターと3.5"ディスクドライブを縦に重ねた形をしているのだ。第一印象は”鉄仮面”という感じで、バンダイのベクターグラフィックスのTVゲーム”光速船”によく似ている。それはまったく予想外のものであった。
ポータブルであるという予想のもとに、オズボーンのようなキーボードで蓋をして、そのボディ自体がカバン型で持ち歩けるという一般的なポータブルという形の予想を完全に裏切っているのだ。
その時、ポータブルという意味、ポータブルという人がそれを運んで使うという意味、そのための性能は何かということに気付く。アップルは既成の何らの概念、ポータブルの”形”に拘らずにポータブルなものを作り出したということに気付く。
ポータブルであるということは、全体のシステム、本体、キーボード、モニター、ディスクドライブ等々の使える全てを持ち運べること。従ってあの重量、そしてカサの小さいことが一番大きい問題であろう。
マッキントッシュは全ての重量が9kg、それは楽に片手で持ち運べる。そしてそれは専用のキャンバス地のカバンに入れて運ぶ。マッキントッシュは、運ぶことが目的のマシンではない。机の上で使うことを目的としているのだ。別に運べる形、いわゆるポータブルの形をしている必要はないのだ。それはカバンに入れてもよし、風呂敷に包んでもよい。とにかく、それは楽に安全に運べればよいということだ。
その縦型の異形は、机の上でもっともメリットのある形をしている。それは机上に占める面積のもっとも小さいマシンなのだ。本体とキーボード.......もちろん本体にモニターは収められているのだから、それはMSX マシンよりも小さいのだ。
アップルは何らの既成のコンセプトにとらわれることなしに、コンパクトでポータブルなマシンを作り出すことに成功した。そのノッペリとした表面には小さなアップルのマーク、その他には飾りに類するものは何一つとしてついていない。簡潔、そしてシンプル、そしてコンセプチュアルなフォームを持ったマシンなのだ。

道具としてのコンピュータ

マッキントッシュ記者発表の会場で、ある有名な日刊新聞の記者がつぶやいた言葉をとても恥ずかしい思いで聞いた。マッキントッシュの部品の外注生産の割合を彼が質問した後だったが、彼はニャニャしながら、つぶやいたのだ。「アップルが作っているのは箱だけなんだ」、これはとっても恥ずかしい発言だ。それはマッキントッシュという一つの物について、何らの想像力、何らの理解も感じさせない。
立派ななハード上のスペックを持った”パーソナルコンピュータ”が氾濫する日本、それは何に使うかも分からない機械、物でしかないように思える。ハード上のスペックしか頭にない、ハードさえ作れば"コンピュータ"ができると思っている世界、それはとても困ったことだ。
とにかく、マッキントッシュという我々に有用な道具を、我々は手に入れたように思える。そして、それはとても簡潔な個人のコンピュータの概念、その哲学・思想を我々に教えてくれているように思える。

Machintosh020104L.gif

Posted by @ January 12, 2004 02:35 AM
Comments

りりこさん、こんにちは。

この何年か後に Mac ll になるのですが、メモリーは8Mがいっぱいでした。これって、今の1Gという感じでした。Mac ll って大きな機械でしたね。

Posted by: 秋山東一 @ January 16, 2004 02:50 AM

以前のログを読んでいて、
わたしは自分の最初のMacのことばかり考えていたけれど
仕事で使った最初のMacはMac2で、縦型のモニタだったこと
しっかり思い出しました。
で、Plusのマウスは女性の手にはゴツくて、
ガバガバするキーボードのタッチは固く、
それに比べてMac2はエレガントだと思ったことも思い出した。
楽しい思い出をありがとう。

Posted by: りりこ @ January 16, 2004 12:48 AM

20周年続きですが、わが家の飼い猫 PIPER POE ことパイパー君は今年2004年11月に20才になります。
昨年末、渋谷区から八王子市に引越しました。たしかに老いましたが、とても元気にギャオギャオと云っております。
http://landship.sub.jp/stocktaking/archives/000051.html

Posted by: 秋山東一 @ January 15, 2004 12:48 PM

昨日は成人式の騒ぎですが、東京ディズニーランドも20周年のようですよ。Macと同じなんだ。

Posted by: 秋山東一 @ January 13, 2004 07:59 AM