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国のない男

BOOKS

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国のない男 a man without a country

著者: カート・ヴォネガット  Kurt Vonnegut
訳者: 金原 瑞人

ISBN: 4140812516
出版: NHK出版
定価: 1,680-円(税込)

今年2007年4月11日、84歳で亡くなったカート・ヴォネガットの最後の著作 A Man Without a Country(2005年に本国で刊行)が邦訳刊行された。

ご存知のようにカート・ヴォネガットは現代アメリカ文学を代表する作家(今もってSF作家なんぞと書いてあるのもあるが)、彼の最新、最後のエッセイ集がこれだ。本人の描いたカリグラフィー(...というのかな)やイラスト(額に入れて飾ってもいいよ、って本人が言っている)、地元の雑誌「In these times」に寄稿してきたコラムに加えて、講演記録等々、いかにもヴォネガットな......一冊なのである。


目次
1 わたしは末っ子だった
2 「トゥワープ」という言葉をご存じだろうか
3 小説を書くときの注意
4 ここで、ちょっとしたお知らせを
5 さあ、そろそろ楽しい話をしよう
6 わたしは「ラッダイト」と呼ばれてきた
7 二〇〇四年十一月十一日で、八十二歳になった
8 人間主義者とはどういう人を指すのかご存じだろうか?
9 何事でも人々からしてほしいと望むことは、人々にもその通りにせよ
10 イプシランティーの懐古的な女性
11 さて、いい知らせがいくつかと、悪い知らせがいくつかある
12 わたしはかって、自動車販売会社の社長だった

   レクイエム
   作者から
   訳者あとがき
   カート・ヴォネガット作品一覧


ヴォネガットと言えば定番の、浅倉久志+和田誠+早川書房じゃなくて、翻訳者(「ブラッカムの爆撃機」の金原瑞人)も出版社も異なるのはなんとなく落ち着かないが、体裁よく、ヴォネガットの最後の本として格調高い雰囲気なのだ。

相変わらずの過激にしてヒューマンな話、カート・ヴォネガットをたくさん読んできた人も、これから読もうとする人も...読まなくちゃの一冊なのだ。

「........じつは、だれも認めようとしないが、われわれは全員、化石燃料中毒なのだ。そして、現在、ドラッグを絶たれる寸前の中毒患者のように、われわれの指導者達は暴力的犯罪を犯している。それはわれわれが頼っている、なけなしのドラッグを手に入れるためなのだ。」


aki's STOCKTAKING: ガラパゴスの箱船

Posted by 秋山東一 @ August 24, 2007 08:47 AM | TrackBack (0)
Comments

iGa さん、どうもです。
Blow Jobs なんていう洒落た言葉を知りませんでしたが、これって婉曲な...というより、いわゆる俗語なんだと思います。

Posted by: 秋山東一 @ August 29, 2007 08:58 PM

知らなかった"Blow Jobs"って、あんな意味もあるんだ。
作者が婉曲に表現したものを直接的に翻訳しなければならないのは、翻訳者の辛いところですね。

Posted by: iGa @ August 29, 2007 10:55 AM

app さん、どうもです。
とても面白かったですよ。それに、とても過激で、啓発的な読書でありました。
彼が、なぜSF作家に分類されてしまったのか...彼自身が「「トゥワープ」という言葉をご存じだろうか」に書いていますが、彼は大学で化学専攻で、処女作「プレイヤー・ピアノ」でスケネクタディという実在の工業都市を書いたため、その場所を知らない批評家には近未来ファンタジーに思えたのだろう...とのことです。

Posted by: 秋山東一 @ August 25, 2007 12:05 PM

出たんですね。読まなくちゃ・・ですね。
話は変わりますが、今年は世界SF大会Nippon2007が日本で開催されるんですね。横浜遠いなぁ、仕事でマトマッタ時間ないし(泣
http://www.nippon2007.org/jpn/index.shtml

Posted by: app @ August 24, 2007 03:52 PM