050929

アースダイバー

BOOKS , JEDI

中沢新一の本だから、どうせ本屋に平積みと思っていたら、最近、なかなか見つけられなかったが手に入った。5刷だそうだ。遅ればせながら読んだのだ。

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アースダイバー

著者: 中沢新一

ISBN: 4062128519
出版: 講談社

定価: 1,890-円(税込)

「アースダイバー」とは、カイツブリが水中の泥をすくって大地を創造したとするアメリカ先住民神話だ。我々の先祖である縄文人が作り出した、その泥でできた地形への畏れは現代に生きる我々にも大きく影をおとしているのだ。

東京の公園と原地形」を読みながら、気になっていたのが本書だ。

同じく「東京の原地形」を扱いながら、縄文時代にまでそれは遡るというのだ。東京に特有の「谷戸」は縄文時代にはそれは入り江だったのだ。

縄文時代前期には海面上昇のため内湾の奥深く海が進入して「縄文海進」と呼ばれている。東京湾の奥深くまで進入した海は「奥東京湾」を 形成していた。縄文時代は、今から約1万2000年前から始まり、2000年前までの約1万年間をさす。「縄文海進」の最盛期は約8000~6000年前で、そのころは現在よりも海水面が平均で3mほど高く、河谷に海が進入し、東京では上野から品川をつなぐあたり、その東側は海で、さらにフィヨルド状の10本もの入り江が吉祥寺辺りにまで及んでいた。

本書の巻末の「アースダイビングマップ」は、縄文海進期と呼ばれる時代の東京の地形を再現している。洪積層と沖積層を色分けし、「東京の原地形」の複雑に曲がりくねったフィヨルド状の海岸地形を再現している。それは脳の断面写真を見るかのように、それは無数の「岬」と「入り江」の組合せなのだ。その上に現在分かっている、旧石器、縄文、弥生遺跡、そして古くからの神社、寺院、さらに古墳と墓地のある場所を重ねてみる。そこに明らかになるのは、それらの多くが岬状の場所にあるのだ。
都市空間の中に散在しているそれらの神社や寺院は、開発や進歩などという時間の侵食を受け にくい場所のままとどまっている。現代の東京は、その地形の中に生きた縄文人の思考から、いまだに直接的な影響を受け続けているのだ。

初めて代々木八幡神社に行った時のことを思い出した。小田急線代々木八幡駅の裏手の小高い台地(標高32m)が神社だ。
そこには竪穴式住居跡があった。最初、石器時代の遺跡が発見され、さらにその後の発掘で住居跡が発掘されたとのことだ。ここから出土した土器によって、この住居には約4500年前に人が住んでいたと推定されている。その時、こんな岬みたいな場所に住んでいた縄文人と、回りは海だった頃を想像した。
「アースダイビングマップ}には明らかに、岬の上の神社と遺跡がプロットされているのだ。今、事務所のある上原2丁目の場所、そこは「入り江」状の部分にある。全面道路は、台風の豪雨に川のように水が流れた。きっとここは昔、こんな風に水が流れる川だったのだろうと想像したが、そうだ「入り江」だったのだ。最近、遠くの台風の影響で東京に豪雨、そして洪水、それも今まで話にでなかったような場所がでてきた。だってそこは川だったもん、あるいは海だったもん、と言えるような気がするのだ。
地球温暖化という今、昔、海だったところが海になるのはなんら不思議ではないのだ。

東京の公園と原地形」は江戸時代、その時の大名屋敷の庭園が、今に残る公園、そこからその原地形を探る、という仕掛けであったが、それを縄文時代間でさかのぼって、東京というところの原地形を探ることができるのだ。「Kai-Wai 散策」の masa さんのエントリーで始った「本妙寺坂」は、それと直行する「菊坂」は深々と切れた「入り江」だったのだ。本書でもその場所について詳細に語られている。

もちろん、この著者のこと「......東京の興味深い景観をつくりなしている........」にとどまることはない。生と死、資本主義、タナトス、アジール、天皇...........と、その思考はとどまるところを知らない。


追記 051025

「(仮称)アースダイビング大会」と称して、実地検分にいつもの仲間とでかけたのである。
六本木から飯倉、東京タワーに上って芝公園、大門を抜けて.....というコースで、縄文の陸と海を探検したのだ。

aki's STOCKTAKING: (仮称)アースダイビング大会


追記 051203

11月24日、「アースダイビング@下北沢」が、アースダイバー9名の参加をもって行われた。
代々木八幡宮から上原、下北沢へと、その地形を吟味すると同時に、下北沢駅前計画と計画道路を検証するという行程10kmであった。

aki's STOCKTAKING: アースダイビング@下北沢


Posted by 秋山東一 @ September 29, 2005 10:16 AM
Comments

そうだ!東京タワー集合ならロシア大使館側の「狸穴蕎麦」で昼飯と思いついたら、店は既に廃業していたのでした。残念!
竜土町の地名が地形に由来するのか気になったのでグーグル検索したら、寛永の頃、竜がこの地に降りてきて昼夜暗闇になったという。2.26事件の将校も地霊との因縁があるのか、ないのか。

Posted by: iGa @ October 11, 2005 11:36 AM

講演チケットは完売ですが「ほぼ日刊イトイ新聞 - はじめての中沢新一」の打ち合せの様子が、、、
http://www.1101.com/nakazawa/index.html

Posted by: iGa @ October 10, 2005 09:51 PM

池袋ジュンク堂にて購入してきました。
アースダイビングの企画、楽しみにしております。

Posted by: fuRu @ October 8, 2005 11:38 AM

amazon現在在庫切れ、だそうです。
かなり気になる本です。
是非、読みたいと思いました。

Posted by: fuRu @ October 6, 2005 06:11 PM

amazonに注文したアースダイバーが、きのう事務所に届いていました。ぼくはめずらしく、金曜日から腹痛と吐き気と下痢と熱におそわれ、2日間をバナナ半本で過ごしましたが、今日(日曜日)になってだいぶ回復してきたので、打ち合わせに行く途中で本をとってきました。

Posted by: 玉井一匡 @ October 2, 2005 06:18 PM