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小商いのすすめ

BOOKS

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小商いのすすめ
 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ

著者: 平川 克美

ISBN: 978-4903908328
出版: ミシマ社
価格: 1,680-円(税込)

2020年東京オリンピック開催……、そんなことよりやることあるだろ……、というのが大方の考えだったような気がするが……、いつのまにか、2020東京オリンピックが決ってしまった。

まぁ、これもそれで儲かる……というような既得権益がしっかりとあるのだろう。しかし、それらが原発推進派と重なりあっているのが不気味だ。

3.11 以降の世界をどう生きていくのか……、その解答として『「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ』なる標題に大いに興味を持って手にしたのだ。あれ以降、原発再稼働、……オリンピック招致も経済成長の為にあるのだ。

私は1964(昭和39)年の東京オリンピックを知っているものだが、本書はオリンピック以前、昭和30年代の東京、それも著者の生まれ育った大田区の町工場の話しから、その街に存在した「小商い」を説いていく。


目 次
まえがき

第1章 経済に蚕食された社会
    ヒューマン・スケールの復興
    社会の成長とは何か
    豊かさへいたるふたつの道
    貧しかったがゆえの豊かさ
    「進歩の差異」から「構造の差異」へ

第2章 街角のフォークロア
    大田区、わが町
    地縁共同体の時代
    アンビバレントな原風景
    商店街のある暮し

第3章 ちいさいことの意味
    「余暇」の出現
    大量生産大量消費の時代の黄昏
    商店街の帽子屋
    貧乏が大人を作った

第4章 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ―東日本大震災以後
    「擬制の崩壊」と「小商い」をつなぐもの
    「出生率低下は将来に対する不安」説の嘘
    人間は意思することと必ず違うことを実現してしまう生きもの
    ちいさな問題とおとなの関係について
    「拡大か・縮小か」ではなく経済をどう「均衡するか」
    反省できないこども
    立ち止まって、見直してみろ
    「完全雇用・生活水準の引き上げ」こそ所得倍増計画
    経済の拡大均衡はなぜ可能だったか
    フクシマに見る希望

第5章 小商いのすすめ
    移行期に起こる国民意識の転換
    個人の発見
    遅れてきたものの責任
    「いま・ここ」に責任を持つ生き方
    縮小均衡の時代
    再び、小商いの時代へ
    井深大の「小商い宣言」
    経世済民の意味するもの
    目印としての小商い

あとがき


もう経済成長を望むことなく、この人口減少の時代に生きていく方策なのだ。オリンピックで忙しくなる方々もおられる由、それはそれ、めでたいが、当方の活きている世界、小さな設計事務所なんてつつましく「小商い」そのものであろう。

今、私の目の前にある物を作る世界、MAKERSFabWikiHouse の世界が。この「小商い」の世界と親和性が高いように思える。作る人と使う人が分断されない世界……、それを目指したいと考えている。


追記 130911

本書の第4章の『「出生率低下は将来に対する不安」説の嘘』に書かれた「人口減少」はこれからの我々の世界にとって決定的なものなのであろう。
千葉大教授の広井良典氏の最新の著作にこのようなものがあるのを初めて知った。

 ● 人口減少社会という希望/コミュニティ経済の生成と地球倫理 (朝日選書)

これは読まねばなのである。


Posted by 秋山東一 @ September 10, 2013 11:04 PM
Comments

neon さん、ごぶさたです。
本書、いろいろな面で示唆にとんでおりましたです。

Posted by: 秋山東一 @ September 11, 2013 09:24 AM

何か、これは読んでみたいと思いました。
私の描く小さな建物たちとも通じる世界の気がします。

Posted by: neon @ September 11, 2013 09:14 AM