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New Johnston

Font , TRANSPORT

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メイリオ Meiryo........明瞭」のエントリーで、Windows Vista の新しい日本語フォントのデザイナーの河野英一氏をご紹介したが、彼のフォント・デザインの最初の仕事が、この「New Johnston」だったそうだ。

これって英国ロンドンそのもの、ロンドンの地下鉄、バスで極く普通に使われているお馴染みのフォント、それは「New Johnston」というフォントなのだ。この ROUNDEL といわれる地下鉄のロゴもそのフォントだが、これってロンドンのロゴといってもいいだろう。

「Underground」とは英国では地下鉄を意味する。1863年に世界で初めてロンドンに地下鉄(蒸気機関車が索引する列車だった)が走ったんだそうだ。その頃のロンドンは全世界の最先端を行く超大都会で、鉄道を走らせるのに地下にしなければならないほどの混み合いかただったんだそうだ。

1910年代に、ロンドンとロンドン近郊を結んでいた各種交通機関とその関連会社は、London Toranceport ロンドン・トランスポートという一つの組織の元に統合される。そのまとめ役を果たした Frank Pick (1878~1941) フランク・ピックは、まず駅や停留所の表示用に今も使われている「丸に横棒」ロゴを採用、そして、当時すでにカリグラファーとして評判の高かった Edward Johnston (1872~1944)エドワード・ジョンストンに、駅名表示などに可読性や認識性や環境によくなじむ新フォント・デザインを依頼した。1916年、彼の手による「Johnston Underground」というフォントが誕生するのだ。

現在、London Toransport ロンドン・トランスポートが、CIの元祖と伝説的に称されるのも、このフランク・ピックの先見性と見識があったからなのだ。

ロンドンの地下鉄のシステム、その案内図から、駅頭の案内図のデザイン、その表示、ロゴ、その全てが「Johnston Underground」によって作り出された。それは、ローマやルネッサンス時代に生まれた人間性のある格調高く美しいABCのエッセンスを、現代風のサンセリフに活かしたフォントとして、世界中に大きな反響を呼んだ。その影響は後続のサンセリフ・フォント、ヘルベティカはじめ、多くの現代のフォント・デザインに影響を及ぼしているのだ。

しかしながら、「Johnston Underground」も、元々サイズの大きなディスプレイ用に作られたため、リーフレットや時刻表などの本文用の小さな活字サイズがなかった。まぁ、写植もデジタルもない時代、活字を鋳造するのには膨大な費用がかかることを考えればやむをえないことだったんであろう。

しかし、全ての文字を「Johnston」で統一しようという動きの中で、1979年、印刷専門学校卒業したばかりの河野英一氏にその仕事がまわってくる。きっと、その仕事には日本人的な根気とセンスを必要としていたのであろう。
フォントのファミリー構成は、イタリックも含めて10種類、それは「New Johnston」と呼ばれ、ロンドンの地下鉄・バス、公共交通機関の駅名表示・標識・ポスターなど、各種印刷物の全てに使用されているのだ。

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● P22 London Underground
● Wikipedia/ New Johnston
● Public lettering (beta version) : Underground station

Posted by 秋山東一 @ August 1, 2005 01:06 AM
Comments

BGY さん、はじめまして、こんにちは。
ロンドンの街を歩く.....となると、もう36年前のことなのですが、きちんとした町のデザインがありますね。
あの頃、びっくりしたことに、ロンドンの地下鉄の地図(もちろんあの有名な)がタイルに焼いてありました。これなら劣化することもないし、路線の延伸や駅名の変更にもうまく対応できるように思いました。
我が国では商業的なデザインは優れていても、公共的なデザインはいかにも酷いと思います。

Posted by: 秋山東一 @ May 31, 2006 07:58 AM

秋山さん、はじめまして。
大阪で細々と表現業に勤しんでいるBGYと申します。
このたびはトラックバックありがとうございます。

このフォント、モコッとした温かい感じが好きです。
視認性を重視した作りと知って、またひとつ視点が増えました。

先週ロンドンの街をひたすら散歩してきましたが、
地下鉄の環境作りは言うに及ばず、交差点ごとの町名表示や、行き先サインなど、最低限のデザインで統一されている為、
街の美観を損ねることなく、歩いていて気持ち良かったです。

文字組みをさせたら一番器用なのは日本人だと信じていたんですが、
近頃は日本人が日本語を活かす能力がグラグラしていますね。
街中に転がるサンプルを参考に勉強していこうと思います。

Posted by: BGY @ May 31, 2006 05:51 AM

いつも思うのですが、日本国の公共的なシステムってどうしてこんなに醜いのかと思うことがあります。
個々のデザインが優れていても、全体としてどうしようもなく酷い、それは、その運用が貧しいんだろうと思います。
空港だろうが駅だろうが、役所だろうが、道路だろうが、サインの他に張り紙、立て看板等々、やれれですね。

Posted by: 秋山東一 @ August 3, 2005 09:47 AM