050731

Eudora Welty

Internet/Web

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昔、Mac でメールといえば、EUDORA ユードラだった。

EUDORA ユードラは、1988年にイリノイ大学のスティーブ・ドナーが開発したものだ。 メール管理に最初のグラフィカルなインターフェースをもたらし、すぐさま企業や大学キャンパスで流行だし「電子メール」を表舞台に送り出す大きなきっかけとなったものなのだ。フリーウェアだったし、なんだか当り前のように使っていたものだが。

その後、ARENA を長いこと使っていたが、今の OSX になってからは MAIL を使っている....というわけで、最近あんまり頭を使っていない。

今でも、QUALCOMM クアルコム社の EUDORA として健在、日本ではライブドアから、EUDORA 6.2J が販売されているようだ。

この名前、EUDORA とは 米国人作家 Eudora Welty ユードラ・ウェルティーの名にちなんだものなんだ。彼女の短編小説「 Why I Live at the P.O.(私が郵便局に住む理由)」から名付けられ、このアプリケーションの名としていまもって有名というわけだ。

この話を知っていても、ユードラ・ウェルティーの小説自体は読んでいないのだが、邦訳が読めないということであれば......努力せねば。

ちょっと古い話だが、この話を初めて知ることになった坂本正治さんのメールマガジン「屑篭直行通信」・2001年の記事を転載しておこう。

毎日新聞の片隅に、ユードラ・ウエルティ(92)が亡くなった、と小さく出ていました。 日本にもユードラ・ウェルティの小説読者がいて、新聞に死亡広告が出るほどの有名だったのか、と、 今更ショックを受けましたが、彼女の作品を読んだことのない人々の間で、彼女ほど知名度の高いヒトは他に例がない。 

いまはウインドウズのひとり勝ちになってしまいましたが、その昔、Mac の定番メールソフトは「ユードラ」でした。別に92才の老作家が作成した郵便ソフトではなく、そのメール・ソフトのプログラマーがユードラ・ウエルティのファン、彼女の作品のひとつ、ミシシッピ沿いの小さな郵便局に住みついたオバアサンの話が気に入って、その名前をつけたのです。

郵便局で暮らしているそのおばあさんは、町の人に郵便を配る前に、ゼンブその中身を読んでしまうので、何でも知ってしまうのです。「ユードラ」というメール・ソフトは、今はもうほとんど使われていませんけれど、Web を使っているひとたちは、毎日、そのオバアサンと同じように、ヒトの電子メールだの日記だの好き勝手に覗いています。

ユードラ・ウエルティのその短編小説は「緑のカーテン」A Curtain of Greenというタイトルだったかと思いますが、60年代に日本語に翻訳されています。洋書ならペーパーバックで今でも簡単に入手できますが、翻訳出版した「荒地出版社」は、もう改組されていて、その短編集も絶版です。

ユードラのプログラマーは、read me の中にそのメールソフトとウェルティの作品の関係を、きちんと説明していますが、それを読んで彼女の作品を(日本語で)読んだヒトは少ないと思います。
ユードラ・ウエルティの作品は、そのメモを見て初めて読んだのですが、このオバアサンは「ニンゲン」という厄介な生き物を実に良く見抜いて、ロシアの文豪チェホフの短編集にも似た、ハイソな作品に仕上げているのです。

「ユードラ」の知名度は Mac ユーザーには抜群ですが、こんな面白い短編集翻訳してネットで売ったらどうですか、と筑摩書房の真面目な編集者に見せて内容を説明したら「売れないでしょうねえ」と、一蹴されてしまいました。

淋しい話ですが、ユードラを使ったことのあるひとも、ビルゲイツのイクスプレスしか使わないヒトもぜひ一度機会があったら目を通してください。
 
(2001.07.27/ 坂本正治)

この話、翻訳家の青山南氏も話題にしている。
● ロスト・オン・ザ・ネット

Posted by @ July 31, 2005 08:12 AM
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