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鉄道ひとつばなし3

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鉄道ひとつばなし3
講談社現代新書 2095

著者: 原 武史

ISBN: 978-4062880954
出版: 講談社
定価: 777-円(税込)

テレビで見た原武史氏は結構脂ぎっていた……のは想定外だったが、日本政治思想史学者である氏は、本書の帯では終に「孤高の学者」になってしまったのだ。

このシリーズの最初の一冊「鉄道ひとつばなし」をエントリーしたのが2003年、「鉄道ひとつばなし2」が2007年、本書は三冊め、ほぼ4年おきの出版……ということになる。

もちろん、本書もまた、鉄道の諸々なのではあるが、彼は「序」に「教会や広場が事実上存在しない日本では、鉄道こそが最も不特定多数の人々が居合わせる公共的な空間となってきた。……」と記し、そこから現代の鉄道ブームを概括し、「コミュニティとしての鉄道」とも言えるような主題を意識していることが、前2冊と本書の違いであることを述べている。


目次
    序

第1章 至福の鉄道旅
第2章 昭和の面影
第3章 駅の記憶
第4章 鉄道から読む・鉄道で遊ぶ
第5章 文化としての鉄道
第6章 私鉄沿線文化論
第7章 海外の鉄道に乗る
第8章 日本の廃線シンポジウム

    あとがき
    駅名索引


今回も達者な筆致で縦横無尽……楽しい鉄道話なのだ。さーて、本業の日本政治思想史の研究は……といえば、本書の中での、天皇と鉄道の話……、垣間見える研究の成果の付録みたいなものか。昭和天皇の侍従・卜部亮吾の日記を読んでも、そこに彼の鉄道的日常を見いだしてしまうのだ。……面白い。

第3章「駅の記憶」は。やっぱり、自分のよく知っている駅の話が面白い。原町田、立川の話は自分の記憶が喚起され、面白く読んだ。特に原町田駅の面白さは格別だ。国鉄・横浜線の「原町田」と小田急線の「新原町田」が600mも離れていた頃の話だ。その600mが闇市のような様相をなしていたことを懐かしく思い出した。


Posted by 秋山東一 @ April 11, 2011 05:44 AM
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