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カラシニコフ銃 AK47の歴史

BOOKS

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カラシニコフ銃 AK47の歴史 世界で最も愛された民衆の武器

著者: マイケル・ホッジズ  Michael Hodges
訳者: 戸田 裕之

ISBN: 978-4309225104
出版社: 河出書房新社
価格: 2,100-円(税込)

なんだか AK47 本のブームなのか、「AK-47 世界を変えた銃」に続いて、本書の登場だ。

AK47: The Story of the People's Gun の邦訳だが、ただの歴史書のような素っ気ない書名よりも、その副題である「世界で最も愛された民衆の武器」こそ意味があるのだ。
本書は、いかにして一介の銃器である AK47 が、世界中の民衆に「愛される」武器になっていったのかを分析した最初の本なのだ。

AK-47 は第二次世界大戦中にミハイル・カラシニコフによって開発され、戦後1947年にソ連軍に正式採用された軍用銃だ。
優れた設計により、どのような環境下でもよく機能し、単純な構造のため、誰でも容易に扱えるという特徴を持つ。東西陣営の冷戦下、ソ連および東欧諸国、中国の正規軍の装備として大量に生産された。

1959年から1975年のヴェトナム戦争で「南ヴェトナム解放戦線」いわゆるベトコンによって西側諸国との戦争に初めて使用され、その優秀な性能を遺憾なく発揮した。米軍の絶大なる軍事力に対して、民族解放のシンボルとして AK は大いに喧伝されることとなる。


目次
 略年表
 はじめに
1 悪い冗談―チェチェン戦士の銃
2 銃の町―ナチスとの戦いから生まれた“第一号”
3 ヴェトナム―爆撃機を撃ち落としたAK
4 パレスチナ―永遠の抵抗のシンボル
5 少年兵士の歌―黒いアフリカの絶望
6 テロヴィジョン―ジハードの武器と映像の力
7 イラク―占領米軍と戦う武器の現在
8 貧困と差別―崩壊する銃社会アメリカ
 謝辞
 訳者あとがき

この AK を数百万挺を生産してきたロシア・イジェフスクの町、そして、AK の開発者ミハイル・カラシニコフの訪問から、ヴェトナム、チェチェン、パレスチナ、アフリカ、そしてテロリスト達、イラクで米軍に対峙する AK が、現地でのルポルタージュとして描かれる。

登場してから60余年、世界の各所で AK が伝説となり神話化し、文化となった銃器 AK の歴史が描れていく。それは、本書の帯の「解放と抵抗、勇気と勝利の象徴!、そして暴力とテロ、グローバル化の象徴!」なのだ。

今、AK は世界中に一億挺も存在するという。最終章の現代の米国での AK の有り様は、私が想像していた、左翼的な、反体制的としての「民衆の武器」という意味から、違った次元での「民衆の武器」となった AK には恐怖心さえ覚えてきた。


Posted by 秋山東一 @ July 3, 2009 01:41 AM
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