040209

カラシニコフ AK47

BOOKS , THINK

ak_asahi_040904_1.jpg(朝日新聞 040904 より)

AK47_7.gif朝日新聞の朝刊に「カラシニコフ/銃・国家・ひとびと」が、編集委員・松本仁一の署名記事として連載されている。

「11歳の少女兵」という13回にわたる記事で、アフリカ・シエラレオネの内戦での少年や少女が兵士として戦闘に参加し残酷な殺戮に加わっている。彼らが使わされている武器が表題の「カラシニコフ」その呼称 AK47 と呼ばれる旧ソ連開発の自動小銃なのだ。
カラシニコフは冷戦時代にソ連から100カ国以上に輸出され、また共産圏諸国でライセンス生産されたため、世界中に1億丁近いAKがあると推測されている。シエラレオネのみならず、パレスチナ、アフガニスタンもイラクにも.....紛争あるところのどこにもあるのだ。

「11歳の少女兵」は13回にわたってその悲惨な運命が語られている。そのあたりで終わるのかと思っていたのだが、そのカラシニコフを分析する記事が続行している。

次からは「設計者は語る」と題して AK47 の設計者、今もって84才ながら健在なミハイル・カラシニコフが登場する。AK47 のAKは「アフタマト・カラシニコワ」(カラシニコフ自動小銃)の頭文字の意味なのだ。
記事は2月7日で「設計者は語る」10回だが、その解説は一般向けの新聞記事としては前代未聞、その銃器としての専門的な設計の詳細が語られているのだ。
銃器評論家の床井雅美がそのあたりサポートしているらしく、正確に語られていると思われる。

シベリア出身の中学卒業というキャリアー、元戦車兵のミハイル・カラシニコフがいかにして世界的銃器設計者となったかが語られ、第2次世界大戦後の銃器への要求「突撃銃」というジャンルの形成、そして、1947年のカラシニコフ AK47 の登場となる。
特に記事の5回、6回の「スカスカ設計の新発想」「ゆがんだ弾丸でも連射」で AK47 の設計上の特徴が分析されている。頑丈で故障がすくなく手入れが簡単で、どんな過酷な場所でも機能し、誰でも(子供でも)操作できる銃、その理由が語られている。
弾詰まりを防止するガスシリンダーとピストンのすき間寸法0.3ミリ、部品数を少なくするためのブロック化して全部で8個の部品に、スライド部500グラムという数字まで語られ、「すかすかのすき間、重いスライド、少ない部品....... 。」というのが AK47 の大きな特徴と結論づけられている。

兵器も一つの工業製品として設計、そのデザインがその性能を左右し、その優劣を決定づける。
このカラシニコフは、20世紀が生み出した人類の代表的な「道具」として存在しているのだ。

しかし、それも殺人するための道具でしかない。
自身の名前が冠せられたカラシニコフが第二次世界大戦中にナチスドイツに対抗する武器として、愛国心の元に開発努力した AK47 が、戦後、冷戦構造の中で東側の武器として使われ、又、民族解放闘争の武器として称揚された時代もあった。
今、貧しい第三世界を破壊し人々を殺戮していく安価で使いやすい高性能な道具と化しているのだ。しかし、その道具の所為ではない、その道具の価値を政治的に利用した社会、人間の問題と思う。

それを作るのも、それで殺されるのも同じ人間である。



AK47_1.gifカラシニコフ AK47
 
旧ソ連軍のミハイル・カラシニコフが開発した自動小銃。AK は「アフタマト・カラシニコワ」(カラシニコフ自動小銃)の頭文字。口径7.62ミリで30発を連射できる。
冷戦時代に100カ国以上に輸出され、共産圏諸国でライセンス生産された。イスラエルでさえAK47のコピー、ガリルを生産使用している。1959年には生産性を上げた AKM が登場、1974年には、小口径の5.45ミリ弾を使用する AK74 へと進化している。
その全てを「カラシニコフ」「AK」と呼ばれ、世界中に1億丁近くあると推定されている。
最近、イラクの日本人外交官殺害事件に使われたといわれ、フセイン元大統領の隠れ家にあったとか、オサマ・ビン・ラディンの写真のかたわらにいつも..........という日常的な存在なのである。

通常、カラシニコフはどこで製造されたものでも製造国、製造工場の刻印がある。シエラレオネのカラシニコフはそれがない。大部分のカラシニコフが「無印」なんだそうだ。まさしく無印の「良品」なのだ。

 ● The AK site. Kalashnikov Home Page
 ● AK47 Operating Manual

AK47_5.gif


今日04年2月12日、朝日新聞朝刊の「カラシニコフ/銃・国家・ひとびと」の「設計者は語る」は13回で終了した。次回からは「護衛つきの町」だそうだ。
「設計者は語る」の最終回は AK の設計者、世界的銃器設計者カラシニコフの質素な生活が語られている。
12回目の「自衛隊の小銃は35万円」でカラシニコフの最新型AK74は工場渡し120ドル、AK の生産工場イジマシュ社は日産1万4,000丁もの能力があるとのことだ、

朝日新聞の連載記事が「カラシニコフ」として書籍化された。

ak040719.jpg


カラシニコフ
著者: 松本仁一

ISBN: 978-4022579294
価格: 1,470-円(税込)
出版社: 朝日新聞社

4022501650.jpg


カラシニコフII
著者: 松本仁一

ISBN: 978-4022501653
価格: 1,470-円(税込)
出版社: 朝日新聞社

追記 060619

 ● 暗いニュースリンク: イラク戦争とAK-47


追記 080515

AK の発明者、ミハイル・カラシニコフの自伝が出版された。
 ● カラシニコフ自伝


Posted by @ February 9, 2004 01:29 AM
Comments

AK47の銃弾一発2セント、これがイラク戦争直前のバグダッドでの相場だそうです。ロリポップ一本よりも安いからイラクの子供はAK47の銃弾をしゃぶっているとか、サラーム・パックスの辛口コメント。

Posted by: S.Igarashi @ February 14, 2004 12:10 PM

恵比寿・東京都写真美術館で2月22日まで開催している「60億の肖像・田沼武能写真展」の「子どもたち」の写真に得意げに"カラシニコフ AK47"を持っている少年(10歳くらい?)の姿があります。その屈託のない笑顔を見ると、その少年は今も生きているのだろうか?と思わざるを得ません。

Posted by: iGa @ February 9, 2004 09:39 AM