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線路を楽しむ鉄道学

BOOKS , TRANSPORT

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線路を楽しむ鉄道学
講談社現代新書

著者: 今尾 恵介

ISBN: 978-4062879958
出版: 講談社
定価: 777-円(税込)

本書の筆者、今尾恵介氏は「日本鉄道旅行地図帳」の監修者である事で明白なのだが、「鉄道」と「地図」の双方の見識にたぐいまれなる方なのである。本書の「まえがき」で、「........「鉄道好きの地図マニア」が書いたものゆえ、.........」とあるが、何をおっしゃるウサギさん........、それは謙遜し過ぎというものなのである。

電車の最前部、運転手の後ろで自分自身が運転しているかのように前方の風景を楽しむ........その喜びを知っている人たちの為の本が本書であるのだ。鉄道とは線路也..........、本書の書名が「線路を楽しむ.......」とあるように、氏でなければ著述しえない視点からの鉄道本なのである。


目次
    まえがき

第1章 線路を観察する
   1 線路の幅はどうなっているか
   2 距離標を楽しむ

第2章 いかに山を越えるか、いかに曲がるか
   1 全国の急勾配区間
   2 汽車はいかに峠越えしたか
   3 カーブを曲がる技術

第3章 車窓から見えるもの
   1 車窓からいろいろな地形を楽しもう
   2 長老トンネル物語
   3 鉄橋あれこれ 高い橋、渡らずの橋、川のない橋……
   4 名称のルール

第4章 「路線」を知る
   1 鉄道の路線名はどうなっているのか
   2 乗り換えの話
   3 全国ナゾの線形めぐり
   4 路線変更には理由がある

第5章 鉄路でたどる鉄道史
   1 何のために作った鉄道?
   2 引込線が語る近代史


本書の図版は線路脇の小さな標識、キロポストから勾配票.......、そして地図がたくさんなのである。この著者では.....、という内容なのである。

4章の『「路線」を知る』の「 全国ナゾの線形めぐり」で、「中央線の一直線」なる記述がある。そこでは何故、中央線が東中野から立川まで東西一直線の理由が語られる。
現在の甲州街道、調布、府中の宿場町に沿って走る京王線ぼ路線が中央線の計画だったが、地元の反対によって頓挫し、その頃何も無かった武蔵野台地を一直線に走る路線となった......というのが「定説」であったが、そのような事実はなかった事が語られている。

中央線の前身、甲武鉄道は、武蔵と甲斐の二つの国を結ぶものとしてあり、調布、府中のような人口の少ない場所を経由する理由はなく、台地上の地盤の良い理想的な一直線ルートをとったということだ。明治期の地図を見れば、当時の多摩地区の「都市」といえる場所は八王子だけであった............なるほど、納得なのである。

この講談社現代新書には原武史氏の「鉄道ひとつばなし2」「鉄道ひとつばなし」があった。この新書、鉄道本も充実である。


Posted by 秋山東一 @ June 12, 2009 08:02 AM
Comments

kadoorie-ave さん、どうもです。
最近、鉄道系のお仕事で遠征されているのを存じ上げております。
はい、この本は必須のご本でございますですね。きっと現地での取材が百倍楽しくなる.........のを請負いますです。
しかし、Mitsuko さんが何でもご存知だと、鉄道関係の人には、ご説明する楽しみがなくなりますね。
原武史氏のテレビも楽しみです。ぜひぜひ.......であります。

Posted by: 秋山東一 @ June 14, 2009 03:29 PM

ありゃっ、NHKの「知るを楽しむ」は春から「知る楽」っていう名称になったんですね。知らずに見てました。(見ていたといっても、いつもは総合テレビの朝の再放送ばかり見ているのです。)

Posted by: kadoorie-ave @ June 14, 2009 12:05 PM

最近鉄道関係の人にばかリ囲まれているせいか、『線路の幅』ですとか、いろいろな話をちんぷんかんぷんなまま、そばで聞いています。この本、そんな私にもおもしろそうです。お値段もラッキーな777...ですし、早速買いに走ります。
それから私の好きな「知るを楽しむ」のシリーズ。「鉄道から見える日本」も、是非見なくては、ですね。モンダイは放送時間をまるで覚えていられないということなんですが...テレビの前に座っていられないといいますか...。

Posted by: kadoorie-ave @ June 14, 2009 11:53 AM

iGa さん、どうもです。
NHK の原武史の「鉄道から見える日本」面白そうですね。月曜日、見てみます。氏の写真を初めて見た時、想像していたよりも脂ぎっている容貌.........は意外でありましたです。
私のは一刷り........でしたが、着いていた帯がカバーじゃないのかと思うほど大きく........でありました。「鉄道旅に出かけよう!」のコピーが書名より大きく、書名「線路を楽しむ鉄道学」ではうけない..........と、よっぽど思っているようですね。

Posted by: 秋山東一 @ June 13, 2009 06:29 AM

あたしも先日、啓文堂の高尾駅前店で買いましたです。会計の後、店内を徘徊していたらNHKのテキストコーナーに「知る楽・探究この世界」のテキスト、その背表紙に原武史氏「鉄道から見える日本」の文字が...。頁を捲ると、既に第一回「鉄道紀行文学の巨人たち」と第二回「沿線が生んだ思想」の放送は終了、第二回は再放送が残されているようです。次の月曜日は忘れないように...
http://www.nhk.or.jp/shiruraku/mon/index.html#

この新書の不思議...一刷りと二刷りの日付が同じ...発行前から増刷が...

Posted by: iGa @ June 12, 2009 10:04 AM