追憶のハルマゲドン | [ BOOKS ] |
本書はヴォネガット没後一周年を記念して、今年2008年4月刊行された作品集 Armageddon in Retrospect の邦訳版である。
「はじめに」は、息子のマーク・ヴォネガットの文章だ。このマークは小児科医で「エデン特急」なる著作のある方だそうだが、生前の父、作家のカート・ヴォネガットの姿を語ってくれる。
そして二つの文章がある。第二次世界大戦で独軍捕虜になり解放された米国陸軍カート・ヴォネガット上等兵、彼の1945年5月に書かれたの家族に宛てた手紙だ。次は、幽霊になって出てきちゃったのか.........最後の作文........亡くなる直前に書かれたスピーチ原稿、それは、彼の死から半月後にマーク・ヴォネガットの代読という形で披露されたんだそうだ。
その後は、未発表の十一編の作品群、彼の第二次世界大戦での体験が生み出したものだ。そして、彼の描いたカリグラフィーやイラストが本書を彩る。
カート・ヴォネガット上等兵が家族に宛てた手紙
二〇〇七年四月二十七日、インディアナポリス、バトラー大学のクラウズ・ホールにおけるカート・ヴォネガット
悲しみの叫びはすべての街路に
審判の日
バターより銃
ハッピー・バースデイ、一九五一年
明るくいこう
一角獣の罠
無名戦士
略奪品
サミー、おまえとおれだけだ
司令官のデスク
追憶のハルマゲドン
訳者あとがき
............... 「もし明快な文章が書けなければ、おそらくそれは自分で思っているほど自分がきちんと考えぬいていないからなんだ」と父は私に教えた。...............
読書と創作は、それ自体が破壊活動的な作業といえる。このふたつが覆そうとしているのは、なにごとも現状維持であるべきで、あなたは孤独であり、これまであなたのような気持ちをいだいた人間はほかにだれもいない、という考え方だ。カート・ヴォネガットの作品を読むとき、人びとの頭に生まれる考えは、物事は自分がこれまで思っていたよりもずっと選りどり見どりなんだな、というもの。この世界は、読者がカートの罰当たりな本を読んだため、いくらか変化するだろう。それを想像してほしい。
また手にとることができ
感動とともに感謝…。