考現学入門
ちくま文庫
著者: 今 和次郎
編集/解説: 藤森 照信
ISBN: 4480021159
出版:筑摩書房
定価: 1,050-円(+税)
本書は今和次郎の代表的著作「
日本の民家」で解説を書いた藤森照信の編集・解説によるものである。
本書の出版が1987年で「日本の民家」が1989年であるから、本書の解説「正しい考現学」の方が時期的に古いものである。
藤森は「正しい考現学」で今和次郎の経歴を概括し、「日本の民家」から始る民家の採集家としての今が、徐々に民俗学から考現学へと変化していく道程を描いている。関東大震災の焼け跡から観察・考察の対象がモノからナマモノである風俗へと移っていった。その和次郎の考現学は、生活学会、原題風俗研究会というような組織に引き継がれ、もちろん、藤森達の路上観察学もその系譜にあることが語られている。
その後、藤森は「日本の民家」での解説を通して、今和次郎をより深く分析、考察しているのだ。
目次
I
ブリキ屋の仕事
路傍採集-1
路傍採集-2
路傍採集-3
焼トタンの家
II
東京銀座街風俗記録
本所深川貧民窟付近風俗採集
郊外風俗雑景
*
下宿住み学生持物調べ(I)
下宿住み学生持物調べ(II)
新家庭の品物調査
III
井の頭公園春のピクニック
井の頭公園自殺場所分布図
*
郊外住居工芸
IV
宿屋の室内・食事一切調べ二つ
カケ茶碗多数
洋服の破れる個所
露店大道商人の人寄せ人だかり
女の頭
学生ハイカラ調べ
V
住居内の交通図
机面の研究
*
レビュー試験場はさまざまである
*
物品交換所調べ
VI
考現学とは何か
考現学総論
*
「考現学」が破門のもと
解説 正しい考現学 藤森照信
本書の第一章、「ブリキ屋の仕事」に、今和次郎のモノをに対する深い眼差しを感じる。
「..........ある旅で、田舎を歩いていて、気の弱い私と同じような、ひとりのブリキ屋の作品に、私は偶然出会ったのである。.......」と、地方の小さな温泉街のガス灯を作っているブリキ屋。その仕事を巧みなスケッチとともに今和次郎は語っているのだ。
ただのブリキ屋の仕事、彼がデザインし彼が作ったものだ。そのアノニマスなモノの有り様に光をあて、それに価値を生ぜしめようという彼の意志を感じるのである。
私も知っているのだ。
BARRACK finder に取り上げている、あの小諸・北国街道沿いのトップライト群、それはその通り沿いに店をかまえる一軒のブリキ屋の仕事なのだ。
Posted by 秋山東一 @ July 18, 2007 12:01 AM