030602

小諸のアースキン

Architecture , BARRACK finder

LANDship/STOCKTAKING/010829

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信州は小諸である。最近、NPО法人「小諸情報ひろば」の設立に参加せよという小諸の友人から話しがあり、参加することになった。また、小諸が近くなった。

小諸との付き合いはもう30年以上になる。まだ、東孝光の事務所スタッフだった20代、小諸の木島さんが経営する小諸自動車教習所の建物を設計する仕事に携わった。それが小諸との関係のはじまりである。その後も木島さんを通じて、小諸周辺の人々、そして仕事と親しくさせていただいた。僕にとって一番親しい「地方」が信州小諸である。
そんな小諸も街中は知らないも同然であった。いつも訪問する木島さんの拠点小諸自動車教習所はちょいと街中からはずれているし、自分一人になったことがないし、観光したり街中をぼんやりするということもなかった。いつも街中で飲んでいたりするんだけど、夜しか知らないということになる。とにかく、小諸の街というものをじっくり見たことはなかったのである。

1997年9月、今から5年前、おそい夏休みという感じで小諸にでかけ北国街道沿いの商店街を散策していた時、それを発見したのである。
それはやや古めの町屋の瓦葺きの屋根にあった。ブリキ製のトップライトである。亜鉛引きそのままの鉄板、錆止めの赤いペイント、それは瓦屋根の上に唐突にあった。それも一軒や二軒ではない、軒並みのトップライト群なのである。

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すばらしく素敵だ。かっこいいと感じた。ふと、建築家ラルフ・アースキン Ralph Erskine の仕事を思い起こした。彼の建築の外側に取り付く「触手」のようなトップライトやその反射板、それらと同じく小諸のトップライトはその存在をうったえていた。その時「小諸のアースキン」なる表題まで頭に浮かんだ。

その瓦屋根の軒低く連なる町屋の集落のトップライトは、「街並み保存」というような視点では見えない。もし見えたとしても、美しい街並には相応しくないと判断されそうな景観ではある。
それは、そんな保守的な景観保存の有様を嘲笑しているかのように、そこに住みそこに暮らす人達のデザインした景色がそこにあるのだ。

小諸に親しく30年といいながら、このトップライト群の存在を今まで知らなかったのは不覚であった。そう言えば、ずいぶん昔、上田への列車の窓から、ちらとブリキのトップライトに気付いたことがあったのを思い出した。30年前であったらもっとたくさんのトップライト付きの町屋が残っていたのではないか、もっと面白かったのではないかと悔やまれる。
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その年(1997年)の11月、友人の事務所と事務所スタッフ、総勢7人で小諸にのりこんでデザインサーベイを行う。題して「小諸探検隊」。

一日かけて(といっても昼食後に行動開始だから半日)この北国街道沿いの本町の町屋のトップライト群の分布の調査と、大塚幸一郎さん(秋草というハンドルネームで小諸情報のホームページを運営されている)のご好意によって大塚さん宅(元は魚屋さんとのこと)を実測調査をおこなった。
大塚さん宅のトップライトは南側にあり道路側からは見えない。北国街道側の長い間口は8間弱、奥行きも8間強と大きな2階建の町屋、もう店舗としての機能はもっていないが店舗部分と居住部分が明確に理解しうる。店舗部分に面した建物の真中の12畳、現在居間として使われている部屋にトップライトはあった。
その部屋の天井高は3mあり吹抜けとなっていた。その上部、細長い漏斗上になった先端に、瓦葺き大屋根を貫いて小さなトップライトが一つあった。そのトップライトの存在がこの居間の環境に大きく貢献しているのを充分理解することができた。

大塚さん宅の実測作業と平行して別動隊がトップライトの分布を調査した。この400m程の街路に、トップライトがある建物が14軒、トップライトの総数は31個にのぼった。

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一軒だけの実測調査ではまだまだ公表できないと考えていたが、又、小諸が近くなったのを期に今回ちょこっと触れておこうと考えた。

この小諸探検隊は、「小諸本町北国街道沿いのトップライト群」の他に「KOMORO Font」なる調査も行った。小諸独特の看板字体があるのをご存知であろうか。それは至る所に分布しているのである。商店の看板からトラックの表示、公共物の表示まで蔓延しているのである。小諸の在住の皆さんにそのおかしさがわからないという「灯台元暗し」状態なのである。
MacOS の伝統にちなんで KOMORO Font とそれを呼ぼうと考えた。探検隊はそのフォントの分布、その南限西限、そのバリエーションの研究である。その後、そのフォントの作者も判明したようである。

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今後、小諸探検隊の成果を小諸の皆さんと共有する形でサイト上に公表していきたいと考えている。小諸という地方都市、その特異性を生かしていくことが小諸を面白くしていくのではないかと考えている。

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小諸情報ひろばhttp://www.komoro.org/
小諸自動車教習所 http://www.tohge.co.jp/
秋草 http://www.komoro.or.jp/


その後の小諸は.........

aki's STOCKTAKING: 小諸式.....
aki's STOCKTAKING: 小諸式天窓


Posted by @ June 2, 2003 02:31 PM
Comments

土屋さん、こんにちは。

木島さんとは35年以上前からのお付き合いです。今みたいに「町づくり」なんて言わなかった時代、あの頃の小諸の町を見ておけばよかったと、ちょっと後悔しています。でも、それはそれで、今みたいには見えなかったとは思いますが。

よろしくお願いいたします。

Posted by: 秋山東一 @ June 6, 2005 09:01 AM

秋山さんこんにちは。川口さんと間違えてコメントつけてしまいました。この話を木島さんに話したら、早速秋山さんの著書をもってきて見せてくれました。川口さんとも小諸再生のことで話しています。またよろしくお願いします。

Posted by: 土屋政紀 @ June 6, 2005 05:59 AM

土屋さん、はじめましてこんにちは。
私は秋山東一といいます。川口さんとおっしゃるのは川口泰明さんのことなのかな。

Posted by: 秋山東一 @ May 6, 2005 09:03 AM

川口さんこんにちは。

小諸の土屋です。
このレポート拝見しました。とても参考になります。

Posted by: 土屋政紀 @ May 5, 2005 08:16 PM