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東京アーカイブス
よみがえる「近代東京」の軌跡
著者: 芦原由紀夫
ISBN: 4381016580
出版: 山海堂
定価: 2,000-円(+税)
その芦原さんから本書をお送りいただいた。コンピュータ系のお話とはうってかわって、東京の都市形成史の全貌、広範囲な世界をコンパクトに収め、貴重な写真も豊富な労作である。
腰巻きに「近代東京100年の記憶がここにある。」とあるように、現代の東京は関東大震災、太平洋戦争によって二度の壊滅的な打撃を受けて再生した。その骨格こそ近代東京が形成したものなのだ。
はじめに
I 東京改造計画の挫折と震災復興
1 幻の明治首都計画ー東京市区改正計画と日比谷官庁集中計画
2 帝都復興の街路計画ー明治が描き、大正・昭和が形づくった東京の動脈
II 東京の水、動脈と静脈の年輪
1 近代水道の来た道ー東京の20世紀を開いた、淀橋浄水場の水
2 ヴィーナスの笑みと憂いー都市下水と廃棄物、「東京静脈」の系譜
III 東京鉄道物語
1 郊外電車の100年ー近代を乗せてやって来た、東京私鉄の群像
2 東京の駅ー東京を語り継ぐ、人と街と汽笛の響き
3 都電の街角ー路線延長200キロ、都電が走ったあの頃、あの街
IV 緑と水の回廊
1 緑の近代都市計画ー「公園制度」130年、遊楽地から近代公園へ
2 装飾橋梁の時代ー初々しい生気に溢れた、橋の東京モダニズム
3 東京水景ー歴史的建造物を通して見る水都の景観
V 「東京」と住むかたち
1 郊外住宅地の誕生ー山の手台地から郊外へ、東京ユートピアの100年
2 集合住宅の「東京物語」ー近代アパートが告げた、明日の都市生活
VI 建築モダニズムの光芒
1 1930年代、「建築の東京」ー昭和戦前、花開く近代建築と激動の時代
2 復興小学校の記憶ー焦土からの復興、近代学舎に「明日」を見た
3 東京パースペクティブの出現ー近代を実感させた塔の風景、塔からの眺め
協力、写真、図版出典、参考文献
あとがき
初代内務相衛生局長・長与専斉、氏は明治初年の欧米派遣時に耳にした「ヘルス」「サニタリー」が健康保護に関わる概念であることを知り、荘子より「衛生」なる言葉をとって訳語とした。東京の上下水道、公園整備等の環境改善によって近代東京の基盤を作り出した。
その長与の後継者が衛生局に迎え入れられた、後藤新平である。後藤は衛生局から台湾総督府に移り台湾の都市施設や衛生制度を整備、そして東京市長となって東京改造の大ビジョンを提示した。
その後藤から技術面の要職に抜擢されたのが、佐野利器だった。彼は震災後の東京の復興を担い、一般建築の復興指導、学校・公園等の建設の復興事業に辣腕をふるう。耐震構造理論の先駆者として今もってその意志は引き継がれている。
この100年にわたる先人達の意志、努力によって江戸から東京、近代東京の基礎が形成されたのである。挫折も失敗もあったであろう、しかし、そこには輝く理念というべきものがあるのだ。
そして現在の東京、ただただ経済的合理というのか、その土地の商業的な価値を最大限に発揮させようという世界に変容してしまった。「Mの時代」に代表されるデベロッパー主導による都市開発に、都市無計画に近代東京を形成してきた先人達は何を思うのか。
耐震偽装.......と言わず、最近のエレベーター事故も、その根源には、そんな高層の施設を建てざるをえないという、土地の商業的な価値を最大限に発揮させようという世界があると思います。
それは理念やら思想のかけらもない、拝金主義というべき世界にしか思えない。
車窓から見たJR中央線沿線風景の良さは沿線に高層ビルが少なく空が高いところにありますが、国立駅北側の高層マンション群はそれをぶち壊してます。昨年、神奈川県立近代美術館に行く途中で見た横須賀線沿線・戸塚周辺の風景も高層マンション群で空が狭くて鬱陶しくて、吐き気を憶えましたが、国立も似たような風景ですね。
Posted by: iGa @ June 19, 2006 01:29 PM秋山さん、こんにちは。
このエントリーを拝読し、さっそく注文をすませたところです。ところで、国立というと、あのマンション問題で訴訟のおこったところですね。あの「大学通り」、たしか駅の南側でしたが、北側のほうは「立錐の余地もない」ぐらい「高層マンションが林立」してのですか。おそらく都市計画により開発を北側に誘導しているのでしょうが、JR中央線をはさんでのコントラストは想像してみると、かなり強烈なものがあります。