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Font Design

Font


evolution—International message (1) より   /click!

Windows の次期バージョン Windows Vista の日本語フォント「メイリオ Meiryo」をデザインされた河野英一さんをご紹介したが、ご本人から直接コメントをいただいた。

フォント・デザインの多岐にわたるお話、新しいエントリーにまとめてみた。
まずは、氏のたずさわったブリティッシュ・テレコム British Telecom の電話帳のフォントについて。

BTPhonebook(電話帳)の関連記事は "evolution" 朗文堂 1990年発行(ISBN 4-947613-27-0 C0070) にMatthew Carterと私が寄稿しております。

グラフィックやタイポグラフィの醍醐味(?)は原寸でシミュレーションできる(?)ことです。すなわち、紙と鉛筆とはさみと糊があればOK。実験開始は今から21年前。文字サイズ6ポイントで組版された原本をPMT(スタジオ用製版カメラ)で4倍に引き延ばして、一字一字切り貼りして見本ページをつくり、縮小して元の大きさに戻して視る、というやや気違いじみた「実験」の繰返し。今なら世の中一変マックでちょいちょいと手軽にできるかと思います。幾つかの電算写植書体を試した実験レポートの結論は、マシュー・カーター作 Lino Type社の写植書体 Bell Centennial を見つけたのが幸いして、このプロジェクトは大成功。(ただし、当時私の仕事先のボスが自らのデザインとして各界へ売り込み、マシュー・カーターの名前も出さなかったのは大変残念なことでした。当時の自分はビザで暮らすよそ者であり、英語も人付き合いも自信がまったくなかったとはいえ、文句の一言も云えず、正直なところ欲求不満でした。朗文堂の片塩さんから "evolution" への寄稿の問合せを頂いた時は「私の元ボスと同時にマシュー・カーターへも問い合わせてご判断くださいとお願いした結果が、上記の出版となったものです。
今回メイリオで一緒にマシューと仕事ができてやっと20年経って借りを返せて気が晴れた感じです。英国も雨曇りが多いか?!それはともかく、メイリオの組サンプルをご覧下さい。「ジョンストンの言葉どおり、マシュー・カーターの文字を使い、アレンジ(レイアウト)に気を配った結果が、年間2億円以上の紙代節約になった」と私は云いたかったのです。
奇しくも今年に朗文堂からジョンストン著「書字法・装飾法・文字造形 Writing & Illuminating & Lettering 1906」が遠山由美女史のすばらしい翻訳で出版されたのは感無量。ちょうどよかった!

New Johnston に関しては Johnston's Underground Type - Justin Howes著 2000年発行 (ISBN 185414 231 3)、および Pen to Printer (EJF Journal No.8, 2003) に私の記事があります。また、メールマガジン「デジクリ」932号2001年9月13日発行(http://www.dgcr.com/cgi-bin/backnumber/back.cgi) は続きを書くつもりでおります(生来の怠惰とのろまが原因でデジクリ編集者/読者の方々には面目ない次第。ハジをかくより、書字をかくように努力したいと思い、最近再開させて頂きました)。
著者のジャスティン・ハウズは上記の著作リサーチ中に共通の友人を介して知り合った仲で、以来10年ほどロンドンの活字博物館設立のボランティア活動を共にしてきた学究肌のタイポグラファー/タイプデザイナーです。 英語圏の活字印刷史上で最も重要視されるカスロン書体 William Caslon のデジタル復刻やサンセリフの歴史展など精力的に素晴らしい仕事をしてきましたが、今年2月に40歳で夭折。まことに残念です。
Pen to Printer 出版のエドワード・ジョンストン協会 Edward Johnston Foundation はジョンストンの眠る典型的な英国の村ディッチリング Ditchling に10年程前に設立され、2003年の恒例セミナーで New Johnston の講演を頼まれたのがきっかけで、私もメンバーになりました。来年のセミナーは5月5, 6, 7日です。名誉会長のヘルマン・ツアップ Hermann Zapf やソムナー・ストーン Sommer Stone 諸氏も参加予定と聞いております。ぜひ日本の方々もご参加頂きたいとのことです。私からもお願い申上げます 。

ロンドン地下鉄路線図のデザイナー Mr. Beck's Underground Map - Ken Garland著 1994年発行 (ISBN 1 85414 168 6) も併せてご覧頂くと面白いかと思います。ケン・ガーランド氏もマシュー・カーターと同じく英国出身の代表的なグラフィック・デザイナーです。1960年代にデザイナーの在り方、いわゆる宣言書 Manifesto "First thing First" を示し、浪費促進の手先デザインに警鐘を放ったことが今日の環境問題などの論評に先見の明としてしばしば取り上げられています。Aki's には最もご紹介したい人物です。

ところで、矢島洋三氏との最初の出会いは1988年。日本から世界へ向けたデザインの風を吹き込んでくださったのは矢島さんです。その頃からの塵が舞い上がって、和文と欧文の混合フォントが形作られてきたと思えてなりません。まだゴミも(小生のです。矢島さんのではありません)沢山混じっておりますので、少しずつ掃除してまいります。よろしくご指導のほど。ありがとうございます。

Posted by: 河野英一 @ August 16, 2005 11:44 PM

河野さんにご紹介いただいた書籍をまとめてリンクしておこう。

● Evolution—International message (1)
● 書字法・装飾法・文字造形 Writing & Illuminating & Lettering 1906
● Mr. Beck's Underground Map
● Johnston's Underground Type

エドワード・ジョンストン協会のウェブサイトはここ。

● The Edward Johnston Foundation

Posted by 秋山東一 @ August 17, 2005 10:05 AM | TrackBack (1)
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