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文体練習

BOOKS

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文体練習

著者: レーモン クノー Raymond Queneau
訳者: 朝比奈 弘治

ISBN: 978-4255960296
出版: 朝日出版社
定価: 3,568-円(税込)

コミック 文体練習」の元本……、レーモン・クノー Raymond Queneau の「Exercices De Style」の邦訳本である。

邦訳本といっても、本書の場合、仏語が日本語となってある……という意味ではなく、そこに日本語の本としてあるのだ。

コミック版を先に見ちゃったから、後先……ということになるが、本書が先なのだ。

S系統のバスのなか、混雑する時間。ソフト帽をかぶった二十六歳くらいの男、帽子にはリボンの代りに編んだ紐を巻いている。首は引き伸ばされたようにひょろ長い。客が乗り降りする。その男は隣に立っている乗客に腹を立てる。誰かが横を通るたびに乱暴に押してくる。と言って咎める。辛辣な声を出そうとしているが、めそめそした口調。席があいたのを見て、あわてて座りに行く。
二時間後、サン=ラザール駅前のローマ広場で、その男をまた見かける。連れの男が彼に、「きみのコートには、もうひとつボタンを付けたほうがいいな」と言っている。ボタンを付けるべき場所(襟のあいた部分)を教え、その理由を説明する。

という内容を99通りの文体、表現の違った文章にしてみる……それが本書なのだ。

本書66は「短歌」である。

 あしふみの 長きバス首 さわげども のちのボタンは さん=らざりけり

付録2は俳諧

 バスに首 さわぎてのちの ぼたんかな

このような言葉遊びを、仏語としてでなく、我々の母語である日本語として楽しめるのを幸いとしたい。

最近、PRESIDENT Online で、内田樹の「子供たちよ、英語のまえに国語を勉強せよ。」を読んだ後では、ひとしお日本語を意識するのである。


  ● 138夜『文体練習』レイモン・クノー|松岡正剛の千夜千冊
  ● クノー『文体練習』:アイデア勝負の文体模写。 - 山形浩生 の「経済のトリセツ」


Posted by 秋山東一 @ June 20, 2013 07:34 AM
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