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the foggy towers of Battersea Power Station

BOOKS

TTSS_33_0.jpgジョン・ル・カレの「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」読了……。

しかし、ちょつと変だな……と思った個所がある。

私は文中に登場する実在物に大いに興味があるが、建築を業とする者として、それが建築物であるとなると過剰に反応なのだ。

450頁、33章の冒頭にバターシー発電所が登場するのだ。

「……全員が長いボンネットの先の対岸に目をやって、バターシー発電所の霧にかすむ鉄塔を眺めていた。……」の「鉄塔」はおかしいと思った、バターシー発電所を前にして、鉄塔なんぞがあったとしても、それに目が行くわけはない……と思ったのだ。

というわけで、これは原書を見たい……。それも、すぐ見たい……というわけで、amazon から TINKER, TAILOR, SOLDIER, SPY の Kindle 版を928-円也で購入してみたのだ。

上のテキストは iPhone 5 横でのものだが、やっぱり、towers とある、こりゃなんたって巨大な4本の煙突のことなのだ。


翻訳者も Battersea Power Station をご存知なのか、その写真を見ていれば、こんな訳を成すことはないだろう。今はネットで、誰でも見たり知ったりすることができる……、翻訳者も大変なわけだ。

Kindle版は iPad や iPhone でも Kindle なるアプリケーションで読めるのも、なかなか便利なのである。

Posted by 秋山東一 @ January 7, 2013 03:31 AM
Comments

村上博基の前の翻訳者の菊地光訳では「おまる」ではなくて「便器」となっていましたから、はじめはトイレの便器をイメージしていたのでした。
ぼくは、ロールスロイスに乗っている人間の視点を考えたことはなく、外からロールスを見るという視点だけでした。しかし、スマイリーの妻アンの一族の視点は、おそらくロールスの中にあったんですね。車を馬鹿にしているよりも中に乗っている連中を侮蔑していたことになるわけだから、その方がずっと毒があって面白いですね。

Posted by: 玉井一匡 @ January 10, 2013 01:55 AM

玉井さん、ロールスロイスのコンヴァーティブルということはないと思います。黒いロールスロイスですから……。
もちろん、それに乗っている……というか中味は糞……、shit に決まっていますが。
まぁ、アン一族のエスタブリッシュでありながら反逆的な思想傾向を説明しているのでありましょう。

Posted by: 秋山東一 @ January 8, 2013 09:58 AM

玉井さん、どうもです。
今回、Kindle版が敏速で役に立ちましたです。例の Smiley's Circus もゲットしましたぞ。楽しみです。

Posted by: 秋山東一 @ January 7, 2013 12:25 PM

 新訳と読み比べてみて、ぼくは全く信用しなくなった菊地光による古い翻訳では「霧にけむっている塔」となっています。菊地訳は正しいなんてことになったらシャクだと思っていたので、胸をなでおろしました。
 ところで、アンの一族がロールスロイスを黒い便器と呼んでいたというのは、英語ではどうだったのだろうと気になっていたのですが、その件りもここにありますね。「black bedpan」であることが分かり、なるほどと思いました。病人のお尻の下に差し込むんだから、幌をあけたコンヴァーティブルのことなんでしょう。だとすれば、のっている人間はshitということになるわけですね。アンも、なかなかおもしろそうな人だと思いす。

Posted by: 玉井一匡 @ January 7, 2013 11:57 AM