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百年の家

Architecture , BOOKS

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百年の家 the House

絵: ロベルト・インノチェンティ Roberto Innocenti
作: J・パトリック・ルイス J. Patrick Lewis
訳: 長田 弘

ISBN: 978-4062830423
出版: 講談社
定価: 1,995-円(税込)

家自身が語っていく。自分自身の歴史を……。

自分が作られた年は1656年、最初は石と木だけの家だったが、窓が出来、外を見られるようになり、庇が出来、人の話し声が聞こえるようになった。
そこに様々な家族が住み、沢山の月日が過ぎ……、いつのまにか、誰も住まなくなった。

そして、ある日、その廃屋は子供たちに見つけられる。「見ろよ! おっそろしく古い家だ」
それは1900年の事、それから100年、20世紀を生きた一軒の家の物語だ。

本著の絵は、イタリアの絵本作家、1940年生れのロベルト・インノチェンティの作、彼は国際アンデルセン賞画家賞受賞の世界的絵本画家として知られる。物語の語り手は、米国の詩人、J・パトリック・ルイス、そして、詩人の長田弘が翻訳している。


1900年に探し出され、家は直され、畑が耕され、葡萄の樹が植えられ人が住み始める。
1915年夏、娘の結婚式……。

定点観測のように同一の視点からの細密な見開きの絵によって、その家、そこに住まう人達の歴史が語られていく。

1918年第一次世界大戦終結、夫の死、1929年葡萄の収穫、1936年小麦の収穫、1942年第二次世界大戦下、1944年終戦、1958年、1967年、女主人の死、1973年、1993年再び廃屋へ……、そして、1999年、アイロニカルな復活。

その時代時代の変化、自然のうつろい、人々の風俗……それらの全てが、細密な絵に表現され、見飽きることない。

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最後の1999年の絵、いかにも日本の建売り風の家の姿に……ぎょっとする。

そういえば、200年住宅というプロジェクトがあった……、石と木で出来た家、その躯体は300年を超えているが、その中味は100年も持つことがない……。

この絵本、スチュアート・ブランドの HOW BUILDINGS LEARN の絵本版というべきものではないかな。

 ● aki's STOCKTAKING: HOW BUILDINGS LEARN / digest


追記 100902

ご他聞にもれず、外国版の方が廉価である。長田弘氏には失礼だが、絵本だし英文も簡単なので、英語版の方がお得である。

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the House

絵: Roberto Innocenti
作: Patrick Lewis


ISBN: 978-1568462011
出版: Creative Co
定価: 1,575-円(税込)


casadeltempo_10.jpg追記 100903

musashino7357 さんの「歌ったり 走ったり 考えたり」で本書が取り上げられていた。

 ● 歌ったり 走ったり 考えたり : イタリアの絵本
 ● イタリア書房 - イタリア、スペイン、ポルトガル、中南米の本の専門店

イタリア書房のブログには本書の書名は「Casa del Tempo」とある。これが原書なのであろう。英語版が「the House」だが、日本語版は「百年の家」であるから、邦訳の方がオリジナルに近いのかな。又、イタリア語版の文章は Roberto Piumini とある。


追記 100907

広島エヌテックの設計を担う yoko-m さんも、本書を取り上げておられる。
 ● yoko-mブログ。 : 『百年の家』


追記 101227

島根県は柿の木村のリンケン、マイルス社長の手元に X'mas プレゼントとして登場したようだ。
 ● マイルスくんが行く(マイルス社長のパラドックスな日々) : 百年の家 the house


Posted by 秋山東一 @ September 2, 2010 11:55 AM
Comments

せんりのいんきょ様
大幅に……でありましたが、完成に向けて精いっぱい……いきたいと考えております。

Posted by: 秋山東一 @ September 5, 2010 04:28 PM

終の棲家計画が出来ようやくお互いに息をつけましたね。これからは対等にお願いします。

Posted by: せんりのいんきょ @ September 5, 2010 08:21 AM

玉井さん、どうもです。
この家の現在が、あんな風でない……、そんな本にもできたのに……、と、ちょっと思うのです。

Posted by: 秋山東一 @ September 3, 2010 06:59 AM

343年間の「the House」を日本語にするときに、詩人があえて「百年の家」にしたのはなぜなのか。家と住む人たちの関係、家とまわりのひとたちの関わりかたについて、石の民家がどうやってつくられたについて知りたくて、amazonに注文しました。迷ったすえに、the House「の方」にしました。

Posted by: 玉井一匡 @ September 2, 2010 11:24 PM