100123

人間を幸福にしない日本というシステム [新訳決定版]

BOOKS

410290008X.jpg


人間を幸福にしない日本というシステム [新訳決定版]
 新潮OH!文庫

著者: カレル・ヴァン・ウォルフレン Karel Van Wolferen
訳者: 鈴木 主税
ISBN: 978-4102900086
出版社: 新潮社
価格: 771-円(税別)

本書は1994年に出版され、33万部のベストセラーとなった単行本を新訳決定版という名で、2000年に文庫本として出版されたものだ。

訳者が変わって鈴木主税氏だが、ウォルフレンが書いた内容が変わるわけではない。追加されたのは、ウォルフレンによる「文庫判はしがき」と、単行本出版に携わった毎日新聞出版局の編集者・志摩和生氏による『暴れた日本の「素顔」』なる解説だ。

ウォルフレンは「文庫判はしがき」に書いている。
この文庫判出版までの6年間の日本の変化を見ながら、日本について彼が書いたことは、残念ながら間違っていなかったこと、しかし、日本人が自分たちが不幸なのは自分たちの問題ではなく、日本という「システム」であることに気がつきつつあることを書いている。
そして、明らかな反対勢力の台頭、自民党が提供してきた選択肢にかわりうる真の政治的選択肢がもたらされつつあること……、そして「日本にとって最も望ましいのは、官僚を支配する政治権力を一刻も猶予せずに確立することだ。つまり、日本の人びとを代表する権力を確立するのである。これはずっと以前から必要とされてきたものだが、1945年以来、いまほど必要とされているときはない。これが実現してこそ、すべての日本市民がそれぞれの役割をはたせるのである。」と書いている。


目次
 謝辞
 文庫判はしがき

第1部 よい人生を阻むもの
 第1章 偽りの現実と閉ざされた社会
 第2章 巨大な生産マシーン
 第3章 無力化した社会の犠牲者たち
 第4章 民主主義に隠された官僚独裁主義

第2部 日本の悲劇的な使命
 第1章 日本の奇妙な現状
 第2章 バブルの真犯人
 第3章 日本の不確実性の時代

第3部 日本はみずからを救えるか?
 第1章 個人のもつ力
 第2章 思想との戦い
 第3章 制度との戦い
 第4章 恐怖の報酬
 第5章 成熟の報酬

暴れた日本の「素顔」 志摩和生


本書の出版から9年かかって、やっと変革が実現した。
しかし、彼の予言した通りのことが起こっている。今、ウォルフレンはどう感じているのか、又、本書の初版の編集者であり、ウォルフレンの友人という志摩和生氏、彼も又、何を思うのか……、最近のマスコミの有様を見て思うのだ。

追記 100123

ウォルフレンは「文庫判はしがき」に、2000年頃、日本で顕著だった事象を興味深く書いている。

「ここで、一つの注目すべき現象がある。それは、いまや誰もが持ち歩いている携帯電話などの新しい玩具が、人びとの注意を政治からそらす役割をはたしていることだ。
……先端技術によってもたらされた最新の新たな娯楽が、日本の人びとの不満をそらす役割をはたしているのは間違いない。また、社会の成熟を妨げているのも明らかだ。」

しかし、この現象は世界的なものなってしまったであろうし、今回の検察とマスコミが一体となった攻撃に対して、唯一、我々が抵抗する手段が、携帯電話と同じ先端技術によってもたらされたネットにあることは、とても面白いことだ。ウォルフレンにとっても意外なことであるに違いない。


Posted by 秋山東一 @ January 23, 2010 09:34 AM
Comments

本日の東京新聞夕刊二面に二段抜きで『米の忍耐にも限り』とダニエル・イノウエ上院議員と日本人記者団との会見が掲載、続いてイノウエ上院議員は『小沢の大訪中団「日本国民に権力を誇示」』と..
今日のこの日に、この記事とは...まさに内政干渉の極め...で...とうとう...であります。
その隣に五段抜きで『社民党大会「普天間無条件変換を...」』う〜ん...

Posted by: iGa @ January 23, 2010 03:25 PM

この本で甘さがあるとすれば日米関係へのもう少し食い込んだ追求があっても良いのではと思わせるところですね。
最近、不可解と思うのは六本木の「政策研究大学院大学」の存在、教員の多くは米国の大学か大学院への留学経験者...都道319号環状三号線のトンネルを隔てて星条旗新聞社と隣り合わせだが...ヘリポートを介して地続きなところです。
まぁ...ジェラルド・カーティスなんてのも客員教授にいますし...
http://minnie111.blog40.fc2.com/blog-entry-1560.html

米国が寛大に亜細亜からの留学生を受入れるのは親米派のミームを育成する為と云われてますし、そうした人材が霞が関や多くのメディアに存在することは否定しようがない事実で、普天間問題を語る論説委員など...ミームそのものですね。

それと「経世会(旧田中派)」VS「清和会(岸信介・CIAエージェント)」との関連性も...興味深い処です。
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2010/01/cia-a85b.html

Posted by: iGa @ January 23, 2010 11:23 AM

本書は絶版で古書、amazon のマーケットプレースで、90-円+配送料340-円で入手した。
今見てみると、あの時あった 1-円からはなくなって266-円からになっている。需要があれば、提供者側は値上げしてくるのだ。なるほどなのである。

Posted by: 秋山東一 @ January 23, 2010 10:25 AM