水深五尋 | [ BOOKS ] |
「尋(ひろ)」って水深や縄の長さの単位、5尺あるいは6尺(1,820mm)とのことだが、Fathom ファゾムも同じくで、6フィート(1,830mm)だ。両方とも両手を拡げた長さという身体尺であるところが面白い。
この書名はシェイクスピアの The Tempest テンペストの台詞 Full fathom five.................によるものだ。英語の人にとってはお馴染みのものなのであろう。
本書は、あの「ブラッカムの爆撃機」のロバート・ウェストールの1979年の作品だ。
本書の表紙、貨物船を攻撃するUボートの画は宮崎駿だ。今回、「ブラッカムの爆撃機」の時の氏の取組みとは打って変わって、挿絵を描くというのめりこみかたなのだ。本当に、ロバート・ウェストールの作品がお好きらしい。
物語の舞台は第二次世界大戦中の英国北東部の港町、そこでの16才の少年チャス・マッギルの冒険の物語だ。作者の育った時代・場所がモデルとなっており、自伝的要素の強い作品と作者自身が語っている。
貨物船がUボートに攻撃され沈没するのを見たチャスは、漂着物に覆われた海岸で発信機らしき物を発見する。そこから、彼と仲間のスパイ探しが始まる。それは港町の諸処で騒動を引き起し、徐々にのっぺきならぬ方向へと動いていく。
戦時下の英国だが、階級格差と左翼、移民、それらの問題が底流に描かれ、ただの少年冒険物語に終わっていない。
彼をめぐる女性達、母親、上流階級の友達の母親、売春宿の女主人、質屋のユダヤ人の女、それらの女性達が十分な存在感をもって描かれている。又、同級生の女の子とのちょっとした恋愛も微笑ましい。やぁ、いろいろな意味で面白い読書であった。
その馴染みの薄い時代背景.........十分な訳注が快適な読書を支えてくれた。
BREN GUN がチェコの地方都市ブルーノの地名に起因してるなんて...........ひどくマニアックであった。
あれぇ、まだお読みではなかったのですか。すぐに、お読みになったと……てっきり思っていました。
そういえば、宮崎駿は「卵をめぐる祖父の戦争」も好きそうですね。……彼の好きな諸々登場だし、人間も魅力的だし……聞いてみたいものですね。
おそまきながら図書館で見つけて読みはじめたばかりですが、いやあ、これも面白いですねえ。少年たちが、じつに生き生きとしてるし、オヤジたちも少年ぽい。宮崎さんが好きなのも、よくわかります。
本のなかの地図をみただけでも魅力的な地形ですが、Googleマップでみるとますますおもしろそうで、GoogleEarthには冒頭に出てくる4基の古い大砲のあるモニュメントが3Dでつくってありました。
セムの部屋につくりかけのメカノのクレーンがあるなんて、さぞや秋山さんをうれしがらせたことでしょう。
これもまた、少女が魅力的。
玉井さん、どうもです。
私の読書が偏っているのかもしれませんが、英国人の老いも若きも、水の事というのか、海事というべきものが好きなように思います。本書の中で大型タンカーのスクリューに巻き込まれそうになるという記述があるのですが、わざわざ、後書で触れてあったりして、その辺り......なかなか厳しいのです。
書名にもそんな常識が反映して............いるような気がします。
原題も「5 FATHOM」でなくて、わざわざ「FATHOM FIVE」としてあるのだし、そもそも人間の身体を基準にした単位なんだから「いつひろ」というべきだと、ぼくも思います。
近頃は、おおかたの単位は個で済ませて、年齢が「5個違い」なんて言い方をしている時代だけに、よく考えてほしいところですね。
宮崎駿が千尋なんていう名前をつかったのも、もしかするとこの本のことがあたまにあったのかもしれませんね。最後に、電車で水の中に入って行くし。
玉井さん、どうもです。
「.......五尋」って「いつひろ」って読むん..........なんて書いちゃってから、岩波書店のサイトを見たら「.......ごひろ」ってありました。ちょっと、それはないだろう........と思うのですが。「一尋」から、ひとひろ、ふたひろ、みひろ..........と言うもんだと思いますんですが。
尋っていう漢字は、左と右と寸なのだとwikipediaに書いてありましたが、なるほどと思いました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/尋