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猫の帰還

BOOKS , Cats

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猫の帰還
Blitzcat
著者: ロバート・ウェストール Robert Westall
訳者: 坂崎麻子

ISBN: 419860911X
出版: 徳間書店
定価: 1,680-円(税込)

猫のエミリー」はちと違うけど、猫が遠くから自分の家に戻ってきたり、遠くに行ってしまった飼い主の元にやってくるということはよくあることらしい。猫にはハトの帰巣本能よりも強い超常的な追跡能力があるのではないかと言われているそうだ。

本書の主人公ロード・ゴート Lord Gort は真っ黒な雌猫、1940年春。英空軍パイロット、ジェフリーが出征した後、妻のフローリーに連れられて移った疎開先からジェフリーを追って旅に出る。

ブラッカムの爆撃機」のロバート・ウェストールの1989年の傑作だ。

ロード・ゴートは、戦時下のイギリス各地をさまよい歩く。そして、様々な人達と出会う。

大陸側海岸の防空監視所に勤めることとなった理科教師のバードウオッチャー、軍隊だけが生き甲斐の英陸軍軍曹、そしてアフリカ戦線に出征中の将校の夫人、工業都市コヴェントリーの大空襲と、その時、やむなく避難民のリーダーになった老馬丁、若くして未亡人となってしまった女流作家、皆、ロード・ゴートの存在によって生かされていくのだ。

ロード・ゴートの旅、パイロットのジェフリーの元への旅は、ちょっとした事故、戦争には付き物の事故によって大いに異なった様相を呈してしまう。爆弾処理の際の事故でロード・ゴートは耳をやられてしまうのだ。
耳が聞こえない猫、ロード・ゴートは飛行場の爆撃機ウィンピーに潜り込んでしまう。そしてドイツへの爆撃行へ........その爆撃行の成功により一躍、爆撃機部隊のペット、守護神となってしまったのだ。
その後、撃墜されフランスへの落下傘降下、スペイン、ポルトガルへの逃避行.......そして、1941年の夏、懐かしいジェフリーの元に戻りつくのだ。

やぁ、面白かった。でも、ちょっと、第二次世界大戦初期の英国の戦時下での生活についての想像力がいるなぁ、それに、あの「ブラッカムの爆撃機」を読んで、ロバート・ウェストールが好き.......なんて人じゃないと、面白くないかもしれないな。

Posted by 秋山東一 @ December 20, 2006 05:32 PM
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