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日本人はどのように建造物をつくってきたか

Architecture , BOOKS

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桂離宮 日本建築の美しさの秘密
日本人はどのように建造物をつくってきたか 10

著者: 斉藤英俊 / イラストレーション: 穂積和夫

ISBN: 978-4794205155
出版: 草思社
定価: 2,310-円(税込)

「日本人はどのように建造物をつくってきたか」は全十巻、法隆寺から始まって、古墳、大仏、江戸・京の町、この桂離宮まで、日本人がつくりだしてきた大小様々の建造物の成り立ちを描いた絵本なのだ。

このシリーズの最大の特長はその全巻、穂積和夫氏のすばらしいイラストレーションによっているところなのだ。日本独自の図解本として「夢の江戸歌舞伎」をエントリーした際、本シリーズに言及していたが、日本の図解本の代表といっても過言ではないのだ。

全巻全て興味深く面白いが、私が一冊選ぶとしたら、この「桂離宮」ということになるだろう。内容は桂離宮にとどまらず、日本の木造建築全般の解説になっているのだ。

穂積和夫氏は1930年生まれ、ファッションや車のイラストレーターとして著名であらせられるが、氏は東北大学工学部建築学科卒(F森教授の先輩にあたる)、大手設計事務所に勤務されていたこともあるという方なのだ。
本シリーズは、そんな建築設計者であったという氏のキャリアが十分生かされたものなのだ。1981年、第1巻「法隆寺」(第28回サンケイ児童出版文化賞受賞)から、1999年「京都1200年 (上・下)」で全十巻完結という、20年近い時間がかかっているのだ。

建築設計者からイラストレーターになるっていったって、そんな容易なことではない。本当に絵が上手だったんだなぁ。昔々、原宿セントラルアパートに事務所があって、時折、お見かけしたことがある。


下の「マンスリーとーぶ2002年11月号」の「ヒューマン・リポート 人間大好き」の穂積和夫氏インタビュー記事が面白い。
氏は1930年生まれだから、すでに76才というお年だが、昔ながらのアイビーボーイは健在であらせられ、いかにも「カッコいい」のだ。この「日本人はどのように建造物をつくってきたか」について、こんなことを言っておらえる。

「..........実は、建造物のシリーズが十冊終わったところで、僕の希望では後五冊やりたいというのがあったんです。出雲大社や平泉、それに日光の東照宮…。ただしあれだけのシリーズになると、いまだに売れているし、これ以上やるというのも、僕自身、今度は体力的にというのがあるんです。」、「.........若い頃は、そんなこと気づきもせず、夢中になって描いていた。今になると、やっぱり筆の先に物凄い神経を集中してることが分かりました。体力的というよりも神経的に先に疲れるんでしょう。」

すばらしい。

ヒューマン・リポート 人間大好き / 穂積和夫氏インタビュー
HOZKAZブログ


日本人はどのように建造物をつくってきたか 全10巻

01 法隆寺
 著者:西岡 常一
02 奈良の大仏
 著者:香取 忠彦
03 大坂城
 著者:宮上 茂隆
04 江戸の町 上
 著者:内藤 昌
05 江戸の町 下
 著者:内藤 昌
06 巨大古墳
 著者:森 浩一
07 平城京
 著者:宮本 長二郎
08 京都千二百年 上
 著者:西川 幸治
09 京都千二百年 下
 著者:西川 幸治
10 桂離宮
 著者:斎藤 英俊


Posted by 秋山東一 @ September 12, 2006 06:40 AM
Comments

穂積さん、わざわざコメントいただきありがとうございます。

なんてったって、憧れの穂積さんがいらっしゃっていただけてうれしい限りです。
昔々、35年も前の原宿セントラルアパートで、穂積さんをお見かけした以来のファンでありますから。
このシリーズ、20年もの時間をかけながら、最初の本から最後の本まで、その筆致に変わりないのは何だろうかと......いつも思うのです。

Posted by: 秋山東一 @ February 14, 2007 07:29 AM

 わたしの描いた「桂離宮」についてたくさんのお褒めの言葉が寄せられているのを拝見し、恐縮いたしております。わたしなりにかなり苦心した甲斐があったかと嬉しい限りです。
 草思社の「建造物シリーズ」10巻のなかで、自分でも好きな作品のひとつです。このシリーズは書き始めた当初から
「活字メディアからヴィジュアル・メディアにシフトする狭間の作業」
だと思っていましたが、今考えるとそれ以上に
「ハンド・イラストレーションからCG画像に移行する過渡期の仕事、いわば渡廊下のような役割」
だったのかなあと思っています。
 描いた当時は下描きにもCGは使わず、ただひたすら描くことに集中したのですが、後に不正確な部分もかなりあることに気がつきました。
 おとり上げいただきましてまことに有り難うございました。過分のメッセージ、いささか照れくさい思いがいたします。

Posted by: 穂積和夫 @ February 14, 2007 12:20 AM

まさにそういう事なんでしょう。
彼が勝手に描いていい訳じゃないのでしょうね。
そこも含めて偉業だと思います。

Posted by: kawa @ September 17, 2006 06:59 PM

kawa さん、どうもです。
あの穂積さんにとっても、建築の絵は難しいということではないでしょうか。著者である学者・研究者やギャラリーである方々もおられますし、20年近くにわたって、きっと大変なご苦労であらせられたのではないかと想像しています。

Posted by: 秋山東一 @ September 17, 2006 12:54 PM

彼の”自動車のイラストレーション”を中学の時に買いました。
学校の教科書をあんなに何度も見た試しがありません。
”黄色いロールスロイス”を何度も真似しました。
高校の時は友達のメンズクラブ誌で彼のイラストを良く見ました。
建築の絵は何せ手間が掛かります。偉業には違いない、大変感心してはいます。でも、彼ならもっと達者でかっこ良い絵でもいいのにな、とも思います。
期待の大きさ故ではありますが、こういう事はい言わない方が良いのかな。

Posted by: kawa @ September 16, 2006 01:20 PM

じゅん さん、どうもです。
これをエントリーしてみて、このシリーズ全十巻のすごさと、穂積さんのすごさを感じています。あと五巻とはいわないけれど、二巻だけでも.......「出雲大社」なんて、穂積さんのイラストを見てみたいと思います。

Posted by: 秋山東一 @ September 12, 2006 11:30 PM

 あのカッコいいイラストの穂積さんが、建築の人だったとは。驚きました。
 しかし、これを20年かけて出した草思社も偉いですね。

Posted by: いしかわじゅん @ September 12, 2006 09:41 PM

栗田さん、どうもです。
穂積さんって教えておられたんでか、やぁ、教えていただいたことがあるなんて幸せですね、
このシリーズはずいぶん前からあるのですが、最近、全十巻の内一冊欠けているのに気がついて買い求めました。それを機会にエントリーしてみました。

Posted by: 秋山東一 @ September 12, 2006 06:08 PM

知らなかった!!
あの穂積先生がこのようなすごい仕事をされていたとは。
とはいっても、学生のころ数回ご指導いただいただけなのですが、私の頭の中では「ファッション関係」の分類で終わっておりました。
もとは東北大の建築学科を卒業されていたのですね。
いい本を教えていただきました。

Posted by: 栗田 @ September 12, 2006 03:59 PM