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夢の江戸歌舞伎

Art/Design , BOOKS

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絵本 夢の江戸歌舞伎


服部 幸雄 (文), 一ノ関 圭 (絵)

ISBN: 4001106485
出版: 岩波書店
定価: 2,730-円(税込)

一ノ関圭はは芸大の油絵科に在学中、漫画家としてデビューをしたという珍しい人だ。そして、その漫画自体も独特の境地というべきものなのだ。

本書を見ると、漫画という狭い世界に留まっている人ではないことが分かる。

この江戸歌舞伎の図解本というべき本は、我が国オリジナルの図解本の最上のものではないだろうか。これに匹敵する図解本は穂積和夫のシリーズ「日本人はどのように建造物をつくってきたか」しかないと思う。
綿密な考証のもと、一ノ関圭の優れた絵画能力はこんな見事な本を作り出したのだ。江戸歌舞伎、その歌舞伎からその舞台、劇場である芝居小屋自体を縦横無尽に図解を果たしたのが本書なのだ。

図解ということでギスギスすることはない、大判の見開きに一枚の大きな画、それは全て、図解しようとする状況に最適な構図、断面、視点なのだ。そして夥しい数の観衆達、その表情、衣装も皆ちがっているという筆力なのだ。

江戸の歌舞伎興行の一部始終、1船乗り込みから、2大道具をつくる、 3衣装方・絵師・かづら師の仕事、4役者たちが惣ざらい、そして、賑やかな、5初日、木戸前とつながるのだ。絵でなけらば見ることができない世界である興業の一部始終、カラクリの仕掛け、奈落での仕事に至るまで、興味つきない世界が、15興業が終わるまで続くのだ。

江戸歌舞伎研究者の服部幸雄と画家・一ノ関圭が、毎月一回以上会って、完成まで8年間かけた、恐ろしいエネルギーがかかった本なのだ。
絵の注という形で、詳細な解説も魅力的だ。絵の隅々にまでエネルギーに満ち満ちている。すばらしい。
解説部分だけの翻訳ですむのだから、容易に外国人にも理解できるものになるであろう。日本の伝統文化紹介の一冊として、海外にも誇れる絵本だと思う。

Posted by 秋山東一 @ July 25, 2006 12:00 AM
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