060810

火と水と木の詩

Architecture , BOOKS

yoshimura_1995_1.gif昨年2005年、成功裏に終わった「吉村順三建築展」で大いに注目された吉村順三、その彼のあまり知られていない講演録「火と水と木の詩」である。

1978年11月11日に行われた新建築家技術者集団岐阜支部主催の講演会と懇談会の内容を、80ページほどの小冊子として1995年6月に発行されたものである。

吉村順三自身が建築、設計について語ったものは数少なく、断片的なものが多い。昨年、展覧会の開催に合わせて吉村順三が自ら語った言葉を集めた「建築は詩ー建築家・吉村順三のことば100」が出版されたが、この「火と水と木の詩」の内容の一貫性にはかなわない。吉村順三本人が、その生い立ちや、なぜ建築を志したか、学生時代、修業時代、そして自身の建築に対する考え方を具体的にして明確に語っている唯一のものなのだ。

講演の対象者は建築設計・施工・行政に携わる若い人達だが、今もって建築に携わっている、建築を志している人達が、吉村順三を学ぶための必須の冊子というべきものなのである。


目次

1 私は何故建築家になったか!
   陣地遊び 
   家に対する関心の芽生え
   帝国ホテルとの出会い
   建築を学ぶ決心
   岡田信一郎先生との出会い
   美術学校時代
   学生時代の海外旅行
   日本伝統建築の再発見
   アントニン・レーモンドとの出会い

2 修業時代
   建築設計の第一歩
   図面の大切さ
   本物の建築とは?(コロニアル建築)
   アメリカでの設計活動
   プランと高さ関係の発見
   日本建築の天井高
 
3 日本での設計活動
   グリッドは運命的である
   日本建築が近代建築に影響を与えた
   土地に生まれた建築こそ本物
   建築は本能的に人間を引きつける
   設計の基本は住宅から
 
4 建築家の役割 
   建築の仕事は欲得なし
   建築家への信頼は教育にあり
   建築創作の喜びと責任
   設計は自分の責任で自分の為に
   自然と交流する形
   商業主義と建築
   建築は人間の精神安定剤
   建築家は自然から学ぶ
   デザインとは温故知新
   血でつながっている伝統建築との絆
   自然と伝統の中に息づく建築

5 一問一答
   愛知県立芸術大学の設計にあたって
   奈良国立博物館の設計にあたって
   ポカンティコヒルの家(ロックフェラー邸)
   建築と風土との係わり合い
   住宅の設計について一言
   形態思考について
   自然との関わり合い
   環境とデザイン
   建築の使われ方
 
6 夕食会にて
   若い建築家の独立
   アメリカの建築
   吉村設計事務所のシステム
   設計者と施主
   設計事務所の分業について
   設計手法
   愛知芸術大学について
   遠藤邸(岐阜市)
   ファイヤー・プレイスの設計
   建売住宅と建築家の役割
   建築行政について
   日本人の建築意識
   現代建築について
   建築と環境
   建築をめざす人々に

あとがき


目次でも明らかなように、実に具体的、明快に彼の考え、経験が述べられているのだ。
これから、私的に吉村の建築手法の原点というべき記述を、この aki's STOCKTAKING にエントリーし記録しておこうと考えている。

komachi memo2 : 「火と水と木の詩」

Posted by 秋山東一 @ August 10, 2006 12:19 AM
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