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忘れられた日本人

BOOKS

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忘れられた日本人
岩波文庫

著者: 宮本常一

ISBN: 400331641X
出版: 岩波書店

価格: 700-円(+税)

こんな本も読んでいなかったのか、と言われそうだ。

今和次郎の「日本の民家」を読んで、ここにエントリーした時、komachi こと真鍋さんがコメントしてくださった「.....今和次郎からAKIさんも参加した60年代後半から70年代にかけてのデザヴェ、宮本常一の視点などフィールドワークの系譜を本にしよう.......」を読んだ時から、宮本常一を読まなくちゃと思っていたのだ。

最近の わきた さんの[ Blog版「環境社会学/地域社会論 琵琶湖畔発」]のエントリー「建築学・70年代の批判的サーヴェイ」でも、東京町家こと迎川さんは「......書物で知った『宮本常一』さんのお話を聴きたくて武蔵野美術大学に転校.......」とコメントしているのだ。

ちょっと前、この岩波文庫を読んだのであった。

今さら、何か......ではあるが、大いに面白かったのである。のっけの「対馬にて」の中での、男女の歌合戦の話、年末大晦日のNHKの恒例の番組は、こんな所に起源があるのかと.....知ったのである。

「日本の民家」の解説が藤森照信であるように、古典というべき本書の解説は誰かは、とても興味あるところである。それが網野善彦なのである。氏は、宮本常一の全てを明確に概括し、宮本の新たな民俗学の誕生を記しておられる。本書について。「無字社会」のすぐれた伝承者としての宮本常一の記念碑的な意味を持つ著作として紹介されている。

解説の最後に、網野は宮本の1978年の自叙伝「民俗学の旅」からの一節を引用、紹介している。

「私は長い間歩きつづけてきた。そして多くの人にあい、多くのものを見てきた。(中略)その長い道程の中で考えつづけた一つは、いったい進歩というものは何であろうか。発展とは何であろうかということであった。すべてが進歩しているのであろうか。(中略)進歩に対する迷信が、退歩しつつあるものをも進歩と誤解し、時にはそれが人間だけではなく生きとし生けるものを絶滅にさえ向かわしめつつあるのではないかと思うことがある。(中略)進歩のかげに退歩しつつあるものを見定めてゆくことこそ、われわれに課されている、もっとも重要な課題ではないかと思う」

この言葉を残した宮本常一、そして、この言葉を喚起した網野善彦も、もういない。

Posted by 秋山東一 @ February 20, 2006 12:24 AM
Comments

石川初さん、どうもです。
「宮本常一データベース」については、af_blog のエントリー「「辺境を歩いた人々」---宮本常一」のコメント欄で紹介されていましたが、すごそうですね。早速、覗いてみることにいたします。

Posted by: 秋山東一 @ February 21, 2006 02:09 AM

こんにちは。
ご存じかもしれませんが、周防大島町が運営している「宮本常一データベース」というのがあって、蔵書リストや年譜や、14,283件(!)の写真データを閲覧できます。昭和30年代の農村風景がちょっとすごいです。
http://www.towatown.jp/database/

Posted by: 石川初 @ February 21, 2006 01:48 AM

やぁ、ぞろぞろと出てこられましたですね。
昔、武蔵美で宮本常一に学んだ諸君、その貴重な経験を発表することを期待いたしておりますぞ。

Posted by: 秋山東一 @ February 21, 2006 01:05 AM

秋山さん、皆さんこんばんは。
東京町家さん、興味津々、楽しみにしています。
宮本さんについては、いろいろ本を読みましたし、離島振興の関係者や何人かの研究者には、宮本さんのお話しを伺いましたが、武蔵美の関係者からお話しを伺ったことはありません。宮本民俗学が、建築を学ぶ若者たちにどのような影響を与えたのか、ぜひ教えてください。

Posted by: わきた・けんいち @ February 21, 2006 12:02 AM

秋山さん、ご紹介ありがとうございました。
それに、komachiさん、わきたさん、御待たせしました。
今となっては、宮本常一さんの生授業を聴いた貴重な人間として、何かを伝えていかなくてはなりませんね。
本に書いてあることを書くとボロが出ちゃうから、授業でしか話せなかったであろうことを書いてみます。

Posted by: 東京町家 @ February 20, 2006 11:55 PM

授業も受けましたが、この本でやっと当時の授業内容が少しだけ分かった気になるくらい不勉強でした。「辺境を歩く」だったか書名は不正確ですが、このあたりの内容が宮本流の武蔵美っぽいところで、ある期は東北の民家調査で家系図と位牌の文字を写してくれば単位がもらえたと、先輩達が話してくれました。

Posted by: shin @ February 20, 2006 10:54 PM

この本は、何度か読みました。
男女の歌合戦も良いんです。
でも、これを読んでいると本当に宮本常一さんという人は
歩いた人、なんだなあと思うのでした。
最近読んだ宮本常一さんの本でTBさせていただきます。

Posted by: fuRu @ February 20, 2006 01:43 PM

東京町家さんは宮本さんの授業を聞いたことがあるんだ。早くBLOGでその事を書いてください。

Posted by: komachi @ February 20, 2006 10:46 AM

東京町家さんは、エントリー「ナゾの怪人『真壁智治』」のコメント欄で、「宮本常一さんの授業については、改めて記事にしようと思っています」とおっしゃっています。楽しみにしているんです(東京町家さん、広めちゃいました。ごめんなさい。)

Posted by: わきた・けんいち @ February 20, 2006 01:35 AM