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植田実の「都市住宅」

Architecture , BOOKS , Mag

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昔、「都市住宅」という建築雑誌があった。
そして、植田実が編集長だった。僕は今でもその雑誌から学んだことを大事にしている。


1968年4月、僕は東孝光の事務所に潜り込んだ。「都市住宅」の創刊号は1968年5月号だから、その創刊と同時に僕は建築実務を始めたことになる。ちょうど、その時「都市住宅」7月号の特集[七日間のユリシーズ]の取材が進行中であった。建築家・東孝光の特集ということで、事務所に入った途端、「塔の家」以外の彼の作品の取材に同行するという絶好の機会を得たのであった。

その1年後、1969年の8月号は特集[東孝光研究室共同作業論]となる。今度の東孝光の特集は建築家・東孝光個人というよりも、その事務所・アトリエがどのように仕事しているのか、スタッフを含めての取材であった。
その時、初めて自分自身が担当した横浜の住宅が取り上げられた。その住宅は「都市住宅」の特集[アメリカの草の根]で取り上げられたチャールズ・ムーアやロバート・ヴェンチューリの軒の出のない箱、片流れの屋根という形態に、もろに影響を受けたものであった。

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10月号の特集[インテリア・デザイン入門]の[プロジェクト・シリーズ4]に、添田浩、秋山東一、仙田満(アトリエMAN & SPACE)の三人のプロジェクトに「SUPER POD 3.8」が掲載された。

1976年、植田実は編集長を去る。

その時代、作りたくて建てたくて、いつもいつもキリキリしていた。建築設計にたずさわったばかりの僕にとって「都市住宅」は一つの場であった。いつもそこから考え、そこに戻ってくるような場、それは植田実編集長が用意していたものだったのだ。


2003年、植田実に対して日本建築学会から「出版・編集を通して建築文化の普及・啓蒙に貢献した功績した業績」により「日本建築学会賞文化賞」が贈られた。その受賞をお祝いしたいという多くの人々が集まり、2004年1月「『都市住宅』再読・植田実の編集現場」展という展覧会と交歓会が開かれた。

そして、一冊の本が生まれた。

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植田実の編集現場—建築を伝えるということ

著者: 花田佳明


ISBN: 4899771029
出版: ラトルズ
定価: 2,625-円(税込)

本書には、植田実の編集者、評論家としての全てがまとめられている。

彼自身の原風景としての戦前の東京、そして、「建築」「都市住宅」という建築雑誌の編集の仕事、書き手としての多くのコラム、「住まい学大系」として現実化された単行本の世界、そして建築ジャーナリストとしての批評精神へと展開されていく。

彼の雑誌編集は「建築」から始っていることを知る。「建築」は僕自身が建築の勉強を始めた時の雑誌、神田古本街でそのバックナンバーを買いあさったのを懐かしく思い出した。

Posted by 秋山東一 @ May 4, 2005 11:33 AM
Comments

花田さん、はじめまして...というよりも、10年も前ですがお会いしているのではないかと思います。
「植田実の編集現場」とても面白く拝読いたしました。
東京でのトークショー、伺ってみようかと思います。

Posted by: 秋山東一 @ May 21, 2005 08:04 AM

突然の書き込み失礼します。
『植田実の編集現場』を書きました神戸芸工大の花田です。日記でとりあげていただき、誠に有難うございました。まさに「都市住宅」世代の秋山さんには、当時の生々しい思い出などさらにうかがいたいと感じました。
出版を記念して、大阪と東京で植田さんとトークショーのようなことをやります。東京は以下の通りです。お時間おありでしたらお越し下さい。

日時/2005年6月11日(土)18:30〜20:30
場所/ジュンク堂書店池袋本店 4階(豊島区南池袋2-15-5)
講師/植田実、花田佳明
参加費/1000円(ドリンク付き)
定員/40名(定員になり次第締め切ります)
申し込み/ジュンク堂書店池袋本店1階カウンターで直接予約か03-5956-6111に電話予約

Posted by: 花田佳明 @ May 20, 2005 10:06 PM