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新選組

BOOKS , Hachioji

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2003年、年末、JR中央線豊田駅の歩道にこんな旗がぶら下がっているのに気が付いた。

Be-eater に「ここ日野市って土方才蔵の生家なんかがあって、NHKの大河ドラマ「新選組」で浮かれているようである。」と書いた。しかし、その感想は浅はかであった。

ここ「多摩」と「新選組」とはもっと深く考察すべき対象であったのだ。

新選組の誕生と終焉とは、ここ東京都下・三多摩という地方の成立ち、そしてその気風と深い関係があるのだった。明治政府によってねじ曲げられた歴史は今もって新選組に、あるいは多摩に正当な地位を与えていない。

そんな新しい「新選組」を書いた書籍を見つけた。昨年末出たばかりの本なのだ。文章とイラストによる「フォー・ビギナーズ・シリーズ」の一冊だ。

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新 選 組 多摩の風土が産んだ志士たち
フォー・ビギナーズ・シリーズ 96

文:佐藤 文明
イラスト:ふなびき かずこ

ISBN: 978-4768400968
出版社: 現代書館

定価: 1,200-円(税別)

近藤勇は調布、土方才蔵は日野、「新選組」を生み出したのは多摩なのだ。

私は「新選組」といっても司馬遼太郎を読んだわけでもないし、子母澤寛の「新撰組始末記」を読んだわけでもない。

黒鉄ヒロシの「新選組」を読んだ(漫画だから見たか)くらいなのだ。「坂本龍馬」「幕末暗殺」、最近「京都見廻組」(……ずいぶんと、格調高くなったもんだ)なる新作も読んだ。

しかし、そこにある「新選組」は、相変わらず「人斬り集団」、「侍に成り上がったどん百姓」「政治的展望のない人斬り集団」という見方を堅持しているかに見える。

明治政府によって作られた、自己正当化の薩長史観によって歪められた歴史は今もって続いているのだ。そう言えば黒鉄ヒロシは土佐出身であった。

本書は多摩という地方の成立ちを、北条支配、甲斐武田の崩壊、武田家遺臣による千人同心(八王子千人隊)の形成から始める。多摩は天領であり、八王子千人隊という半農半士の存在は、農民と士の垣根を低いものとしていた............。

時代に翻弄されながらも「誠」に生きた武装集団の若者達と、彼らを生み出した多摩、彼らを支えた高潔な農民たちの歴史なのだ。

新選組「多摩・自治の気風が生んだ志士たち」
来年、始まるNHK大河ドラマに合わせた出版で、サブタイトルは「多摩の風土が産んだ志士たち」です。現在の日本史は西日本を中心に書かれたもので、薩長史観につらぬかれたもの。これを多摩から見直す必要を説いたものです。そのため、従来の「新選組」とはまったく違う解釈によって成り立っています。同様の観点から、いま3冊の本を準備中。ビギナーズでは本書の後編にあたる「自由民権」をまとめようと思っています。

著者・佐藤文明氏は1948年、東京・日野生れ フリーランス・ライター、戸籍制度研究者、批評家.......だ。
1981年出版の同じフォー・ビギナーズ・シリーズの一冊「戸籍」は代表作、ベストセラーにしてロングセラーだ。立川高校で私の6年後輩なのであった。

 ● 佐藤文明のホームページ
 ● パーソナル

本書で佐藤文明氏が喚起してくれた多摩の歴史……、それはその後のエントリーに活きている。

 ● aki's STOCKTAKING: 未完の「多摩共和国」—新選組と民権の郷
 ● aki's STOCKTAKING: 絹の道


追記 140622

本書の著者である佐藤文明氏は2011年1月3日、62歳で亡くなってしまった。

 ● 佐藤文明さんを偲ぶ会


Posted by @ January 7, 2004 09:02 AM
Comments

ん〜む、大正天皇陵を多摩のこの地に造ったのも、自由民権、反政府的な思想を一掃して、尊王思想によって人心を掌握するプロパガンダであった。と、云うことなのね。

Posted by: iGa @ January 7, 2004 09:52 PM

薩長史観に異議を唱える自由民権運動の中で、多摩地区に於ては千人同心の末裔や戊辰戦争に敗れた元仙台藩士や元会津藩士等も参加して、より民主的な五日市憲法を草案していたそうです。
その本の後編では、五日市憲法が取り上げられるのかも知れませんね。

Posted by: iGa @ January 7, 2004 03:09 PM

コイッチさん、明けましておめでとうございます。

コメントありがとうございます。参考になったとまでおっしゃっていただいて、うれしく思いました。
私が住んでいる八王子はまさしく多摩なのです。ずっと、新選組って.......と思っていたのが、ひっくり返りました。
灯台下暗し、昨日買い求めたばかりだったのですが、一気に読了、エントリーしてしまいました。

今後ともよろしくお願いいたします。

Posted by: 秋山東一 @ January 7, 2004 02:57 PM

明けましておめでとうございます。今年も楽しく拝見しております。

少し前のNHK「その時歴史は動いた」(だったと思います)で多は、摩まわりの地域性と幕末の新撰組の顛末にスポットを当てた解釈で伝えていたように思います。とても発見にみちた良い番組でした。良い本ないかなと思っていたので、このエントリーは参考になりました。

Posted by: コイッチ @ January 7, 2004 02:31 PM