030911

月と火星の写真

etc.

あの科学評論家にして翻訳家の田中三彦(たなかみつひこ)氏より、「月と火星の写真」というメールをいただいた。すばらしい月と火星の写真が添付されていた。
私はその写真に驚愕し、氏にこの blog での公開を依頼したところ快諾、ここに公開することにする。
写真はサムネイルになっており、クリックによって、田中氏・オリジナルの写真(あまりに画像が大きいので半分の大きさにしてある)を見ることができる。

皆様、お元気でお過ごしのことと思います。田中三彦です。

先日、火星と月がニアミスしました(もちろん、地球から見るとそう見えるだけの話ですが)。
急遽、ベランダに望遠鏡を据え付け、デジカメを載せて撮影してみました。
東京の空は明るいし、きたないしで、ダメかと思ったら、結構うまく撮れました
(と、勝手に思ってます)(^_^;)。
というわけで、人さまの迷惑も顧みず、いろいろな方々にこうして一方的にメールを送りつけています。
ご覧いただければ、こんなうれしいことはありません。

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写真の解説/一枚目
写っている月は、月のほぼ真下の部分。目立っている大きいクレーターは「ティコ・クレーター」です。
月の下、赤い小さな星が火星です。よく見ていただくと、火星の南極あたりが白く覆われています。
いま火星の南極は冬季のようです。大気中の二酸化炭素が凍ってドライアイスになっているようです
(まあ、行ったことがないので確かなことはわかりませんが……)。

写真の解説/二枚目
我が家の狭いベランダに設置した望遠鏡(MEAD ETX105)とデジカメ(Nikon Coolpix4500)。(これは別の日のもの)


13日の0時、詳細なるコメントをいただいた。

「悪戦苦闘」の記

私信で秋山東一様にお送りした写真を、aki'sSTOCKTAKINGに載せて頂き、とても光栄です。望遠鏡を扱うのは高校生以来、天体写真を撮るのは今回が初めてという、ほとんどド素人の私ですから、この程度の写真を撮るのもじつに大変でした。3ヶ月間、寝食を忘れて(ちょっと大袈裟か)あれこれ研究しました。最大の問題はコリメート撮影に向いているデジカメはどれだ?、でした。コリメート撮影は、望遠鏡や双眼鏡を目で覗くかわりにデジカメに覗かせ、写真を撮ってしまおうという方法です。で、結論は、Nikon のCoolpix4500 は、コリメート撮影のためにあるような理想的なデジカメだったということ。理由は二つ。一つは、電源を入れようが切ろうが、テレ側にしようがワイド側にしようが、このデジカメ、胴がにょきにょき出たり引っ込んだりしないこと。外見的には、何も動くものがないことです。もちろんレンズは内部で動いていますが、その動きは外には出ません。デジカメを望遠鏡の接眼レンズに押しつけて固定するコリメート撮影では、接合部に動きがないことが理想です。いや理想というより、私のような素人にはほとんど絶対条件みたいなものです。この簡単な結論にたどりつくまでに、私はお金を数万もはたき、山の神に睨まれました。

 もう一つの理由は、「ケラレ」と関係しています。コリメート撮影におけるケラレは、めちゃくちゃに奥の深い現象であることが今回わかりました。ケラレは、いわばデジカメの「視野狭窄現象」。つまり、望遠鏡を人間の目で覗いた場合より、見える範囲が狭くなってしまう現象です。よく本などには、「デジカメをテレ側に引くとケラレは解消される」などと書かれています。しかしこれは事実とはかなり異なります。いくつかの機種で確かめた結果、デジカメのレンズの動きの特性によります。確かに、テレ側にするとある程度ケラレが改善される場合が多いのですが、ますます視野狭窄になるデジカメもありました。で、このケラレに関しても、Coolpix 4500は最高でした。長くなるので書きませんが、ワイド端からテレ端まで、レンズが内部でとてもおもしろい動きをするからです。ケラレはほぼ完全に解消されます。

 あと、実際にデジカメを望遠鏡に載せると、その重みで望遠鏡の筒が動いたり、そったりするという困った問題も発生しました。私は「小銭」で、それを解決しました(うんーん、どっかで聞いたようなせりふ)。カメラと正確に同じ重さの小銭を秤で量って、それを袋に入れて望遠鏡の接眼レンズの近くにぶら下げておきました。そして、目的の天体をうまく導入できたら、小銭袋をそっと除去し、カメラを載せました。こうすれば、重さはプラス・マイナス・ゼロ。この小銭作戦、予想以上にうまくいきました。

 最後に、露出の問題。月と火星ではそれこそ月とスッポンほど明るさがちがうので、二つを一枚の写真におさめるのは、とても大変でした。これ、測光条件をいろいろ変え、少しずつこつをつかむ世界のようです。

 つぎはもっともっと高倍率にして、火星だけを撮ろうと思ってますが、これもまた簡単ではなさそうです。でも、楽しそう。

 田中三彦

Posted by @ September 11, 2003 06:31 PM | TrackBack (0)
Comments

「悪戦苦闘」の記 / 田中三彦
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Posted by: 田中三彦 @ September 13, 2003 12:00 AM