030710

 1. 伝達としての模造

TAU·SHOKEN·KENCHI

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模造品を原形に関する情報伝達の手段として用いる場合がある。「表現としての模造」も伝達を行うのだが、それは原形そのものについて伝達するのではない。そこには、例えば作者の意識といったものが付加され伝達されるものは、むしろ原形であるよりも意識やあるいは意味である。ここでは原型自体について伝達する場合の模造を「伝達としての模造とした。」
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モンタージュ
モンタージュ写真では、原形の所在や形態が隠されていて、その制作者に対しても例外ではない。目撃者の漠然とした、時には増幅された記憶をたぐり寄せ、集積されて作られる模造品はすでに犯人の顔の模型ではなく、むしろ犯人の顔の引き起こしたイメージを原形としているか、あるいはそれどころかそれがさらに時間によって変質してしまった代物である。
それを受け取る側は今度は前の操作を逆に辿り、時には推測を加えながら自分の犯人とおぼしき人物が警察の捜している人物と同一人物であるかどうかを決定するのである。


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地図
地図は、原形との間にほぼ1体の対応がすくなくとも形態の点では成り立っているので、模型にある約束に則った変換を行えば、原形をまず平面的に知ることが出来るし、高さの方向でも等高線という約束事にしたがえば、原形を復元することもできる。デフォルメされた地図では形態上は1体の対応はくずされるが、それを補うためにシンボルがより多く導入され、それにともなって約束事がより強化されてくるのである。

設計図
設計図は実物に先行して作られるので、作られる課程ではむしろ実物が設計図の模型である。同時に設計図は想像の模型でもあるが、ひとたび実物ができるや外から見れば実物が原形であり設計図は模型となる。けれども挫折した設計では想像が原形、設計図が模型という関係が凍結され天折といったものの魅力さえ持ち始める。

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「商店建築」1972年11月臨時増刊号所収

Posted by @ July 10, 2003 11:05 AM
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