030724

 9. パーソナルコンピュータって・・・

Computer , TAU·SHOKEN·KENCHI

LANDship/1997
ST.GIF

秋山東一のストックテーキング [9]

「パーソナルコンピュータって革命なんだ」

「建築知識」1986年3月号所収


● 今、パーソナルコンピュータなんてどこにでもある。PCだFMだなんて言って、「君、コンピュータで日影図なんて常識よ」って雰囲気なんだ。人によって好き嫌いはあるにしても、ここ数年、パーソナルコンピュータって誰でももてるようになったし、少なくともそれなりに役に立つ道具、機械だという認識は皆もっているようだ。

●“パーソナルコンピュータって革命なんだ”と言っても、技術革新の成果としてのパーソナルコンピュータ革命なんていう生っ白いものではない。僕の言ってる革命というのは、血なまぐさいのだ。被支配階級が支配階級を打ち倒し、とにかく血なまぐさく政治権力を奪取するという革命のことだ。そう、パーソナルコンピュータってのは革命なんだ。思想的にね。

COMPUTER LIB.GIF

● 僕は昔からコンピュータが欲しかった。そして、DIGICOMP1という、アメリカ製で、コンピュータの原理がわかる科学教材みたいな、コンピュータの模型を買った。それは、“世界最初の実際に動く、オールプラスチック製コンピュータ”という高度なおもちゃだった。コンピュータを使ってみたいというより、所有したいということのほうが強い僕としては、その時はそれなりに満足であった。

● 1977年、マイコン登場---1枚の基板の上に色々とチップがのっていて、簡単な数字入力キーと、チカチカと数字を表示するLED。でも、僕にはそれはDIGICOMP1とたいして変わらない感じがした。少なくとも、タイプライター型のキーボードとディスプレイが無いと、僕の欲しいコンピュータには程遠かったのだ・・・その頃、コンピュータ屋の片隅で大判の薄っぺらなペーパーバックを見つけた。表紙にはCOMPUTER LIBとあった。そして握りこぶしの絵。LIBというのはリベレーション、ウーマンリブのリブだ。

● それは僕にとって素晴らしい本だった。副題には「あなたは今、コンピュータを理解できるし、しなければならない」とあった。それまでのコンピュータというのは、大きくて高価、中央集権的で、巨大な組織のための道具、そして管理する道具であった。それは、聖職者じみたプログラマー、システムエンジニア、オペレーターのためだけの道具であり、その道具、コンピュータを我々のために解放しようというのが、COMPUTER LIBの主張だ。著者はテッド・ネルソンで1974年に出版されたものだ。まだ、マイコンのマの字もパーソナルコンピュータのパの字もない頃に、コンピュータを革命しちゃおうという主張があったのだ。個人のための、個人による、個人のコンピュータ。パーソナルコンピュータはひとつの思想なんだ。

● 1979年、僕は AppleII を買った。そして今、Macintosh。でも、今もってそれは「革命」の目的であり、思想的道具なんだ。

「建築知識」1986年3月号所収


今もって、この主張に、何の疑いももっていない。
たくさんの技術開発によって、AppleIIが Mac になり G4 が64ビットの G5 になろうが、インターネットだろうが、もっとすごいのが来ようが、個人が、その個人によって自由を獲得する道具としてのコンピュータであって欲しい、と思う。

-----------aki/030724

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Posted by @ July 24, 2003 10:10 AM | TrackBack (0)
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