ハートマウンテン日系人強制収容所 | [ BOOKS ] |
今回、本書によって強制収容された日系人、彼らの収容所での生活を知ることができたのは幸いであった。そこには苦難にめげない人々がおり、美しい色があったからだ。
本書の題名「……ハートマウンテン日系人強制収容所」はいかにも即物的だが、原書は COLORS OF CONFINEMENT という書名だ。
直訳すれば「監禁状態の中の色彩」とでもいうんだろう。まぁ、……「幽閉された色」という詩的な響きがあるのだ。
ここで、「コダクロームフィルムで見る……」という副題が意味を持ってくる。
本書は収容された一日系二世ビル・マンボ氏によって、収容所内で撮られた写真、写真集なのだ。それも、その当時珍しかった Kodachrome コダクローム、リバーサルフィルムによる写真なのだ。
そのカラー写真が、収容所内の写真であること、その写真が最近まで人目に晒されることなく埋もれていたこと……、その二つの事実を CONFINEMENT の言葉に象徴させているのだ。
今と変わらない楽しげな風景……、きっと皆、英語でのおしゃべりなんであろう。
しかし、ここは米国ワイオミング州の荒地に建てられた収容所だ。彼女達の背景は収容されているバラックなのだ。
鉄条網に囲まれた収容所の外でとられたものだ。
穏やかな日の光の中で、その樹木一つない荒涼とした風景がバックなのだ。
バラックは木造、アスファルトルーフィングを胴縁で打ち付けただけの粗末な外壁、過酷な冬期の居住環境の苦労は想像して余りある。
フレームの外側 ビル・マンボの写真の時代背景 エリック・L・ミューラー Eric L. Muller
有刺鉄線の向うの若者の日常 ベーコン・サカタニ Bacon Sakatani
収容所の中のカメラ ビル・マンボの写真にみるヴァナキュラーな写真の力 ジャスミン・アリンダー Jasmine Alinder
日経アメリカ人研究に開く新しい扉 ロン・クラシゲ Lon Kurashige
謝辞
訳者あとがき
注釈
息子、家族のスナップ写真、記念写真が中心だが、収容所内の行事、盆踊り、相撲大会、ボーイスカウトの行進、収容所の風景、周辺の風景等々……、皆、鮮やかなカラー写真だ。
本書の用紙は、およそ美麗なカラー写真の印刷に適しているとは言い難いが……、それでも、70年前のカラーを今のように見ることができる。本当に、びっくりする写真集なのだ。
本ブログにも、1952年、日本に占領軍として駐留した米兵によってコダクロームで撮られたであろう写真がある。
● aki's STOCKTAKING: 八王子駅 /1952年
いまは無き Kodachrome コダクローム・フィルム……、そこに魔力のようなものを感じるのだ。
この写真集、親友I氏よりいただいたものだ。自分用に買い求めたのに……横取りしてしまったようで申し訳ない。
新しい未知の本って本屋でうまくぶっかればいいのだが……、いつもうまくぶっかるというわけだはない。このように、予想外の本に出あう事ができて実にうれしい。
Iさん、……どうもです。
この写真を撮ったのはビル・マンボ氏だが、彼の正式名は、Bill T Manbo のようだ。
Bill は英語名、T は Takao だそうだ。そして、Manbo について本書に何も書いてないが、Manbo は日本の姓だから、満保……というような珍しい姓だったのあろう。
Shin さん、どうもです。
すばらしい本……、ありがとうございました。十二分に堪能いたしましたです。
楽しんでもらえた上、見事な解説も、ありがとうございます。
Posted by: Shin @ September 18, 2014 07:46 AM