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ハートマウンテン日系人強制収容所

BOOKS

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コダクロームフィルムで見る ハートマウンテン日系人強制収容所 


写真: ビル・マンボ Bill Manbo
編者: エリック・L. ミューラー Eric L. Muller
訳者: 岡村 ひとみ

ISBN: 978-4314011198
出版社: 紀伊國屋書店

価格: 3,132-円(税込)


第二次世界大戦、太平洋戦争の開始とともに始まった米国の日系人の強制収容、そのご苦労を知らないわけではない。もちろん、1988年、米国大統領によって、それは人種差別に基づくものであり、強制収容の事実の謝罪と補償がおこなわれたことも……。

今回、本書によって強制収容された日系人、彼らの収容所での生活を知ることができたのは幸いであった。そこには苦難にめげない人々がおり、美しい色があったからだ。

本書の題名「……ハートマウンテン日系人強制収容所」はいかにも即物的だが、原書は COLORS OF CONFINEMENT という書名だ。
直訳すれば「監禁状態の中の色彩」とでもいうんだろう。まぁ、……「幽閉された色」という詩的な響きがあるのだ。

ここで、「コダクロームフィルムで見る……」という副題が意味を持ってくる。

本書は収容された一日系二世ビル・マンボ氏によって、収容所内で撮られた写真、写真集なのだ。それも、その当時珍しかった Kodachrome コダクローム、リバーサルフィルムによる写真なのだ。

そのカラー写真が、収容所内の写真であること、その写真が最近まで人目に晒されることなく埋もれていたこと……、その二つの事実を CONFINEMENT の言葉に象徴させているのだ。

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収容所内で行われた盆踊りでの、おしゃべりする着物姿の少女達の写真だ。

今と変わらない楽しげな風景……、きっと皆、英語でのおしゃべりなんであろう。

しかし、ここは米国ワイオミング州の荒地に建てられた収容所だ。彼女達の背景は収容されているバラックなのだ。

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正装した家族。ビル・マンボ氏の妻と息子、そして義父母と義妹の写真だ。

鉄条網に囲まれた収容所の外でとられたものだ。

穏やかな日の光の中で、その樹木一つない荒涼とした風景がバックなのだ。

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収容所のバラックと虹、こんな過酷な環境の下でも、風景を美しく感じる心がある。

バラックは木造、アスファルトルーフィングを胴縁で打ち付けただけの粗末な外壁、過酷な冬期の居住環境の苦労は想像して余りある。


目 次
はじめに トム・ランキン Thomas S. Rankin

フレームの外側 ビル・マンボの写真の時代背景 エリック・L・ミューラー Eric L. Muller

有刺鉄線の向うの若者の日常 ベーコン・サカタニ Bacon Sakatani

収容所の中のカメラ ビル・マンボの写真にみるヴァナキュラーな写真の力 ジャスミン・アリンダー Jasmine Alinder 

日経アメリカ人研究に開く新しい扉 ロン・クラシゲ Lon Kurashige

謝辞

訳者あとがき

注釈


本書は収容されていた日系二世ビル・マンボ氏が、自身のコンタックスで 35mm コダクローム・フィルムに収めた写真だ。本書には64枚の写真がおさめられている。

息子、家族のスナップ写真、記念写真が中心だが、収容所内の行事、盆踊り、相撲大会、ボーイスカウトの行進、収容所の風景、周辺の風景等々……、皆、鮮やかなカラー写真だ。

本書の用紙は、およそ美麗なカラー写真の印刷に適しているとは言い難いが……、それでも、70年前のカラーを今のように見ることができる。本当に、びっくりする写真集なのだ。

本ブログにも、1952年、日本に占領軍として駐留した米兵によってコダクロームで撮られたであろう写真がある。
 ● aki's STOCKTAKING: 八王子駅 /1952年

いまは無き Kodachrome コダクローム・フィルム……、そこに魔力のようなものを感じるのだ。


追記 140915

この写真集、親友I氏よりいただいたものだ。自分用に買い求めたのに……横取りしてしまったようで申し訳ない。

新しい未知の本って本屋でうまくぶっかればいいのだが……、いつもうまくぶっかるというわけだはない。このように、予想外の本に出あう事ができて実にうれしい。

Iさん、……どうもです。


追記 140916

この写真を撮ったのはビル・マンボ氏だが、彼の正式名は、Bill T Manbo のようだ。

Bill は英語名、T は Takao だそうだ。そして、Manbo について本書に何も書いてないが、Manbo は日本の姓だから、満保……というような珍しい姓だったのあろう。


Posted by 秋山東一 @ September 15, 2014 03:41 PM
Comments

Shin さん、どうもです。
すばらしい本……、ありがとうございました。十二分に堪能いたしましたです。

Posted by: 秋山東一 @ September 18, 2014 01:55 PM

楽しんでもらえた上、見事な解説も、ありがとうございます。

Posted by: Shin @ September 18, 2014 07:46 AM