ラ・ドゥース | [ BOOKS , TRANSPORT ] |
作者のフランソワ・スクイテンは「闇の国々」の作画で高名だが、私にとってはちょっと苦手な感じで本棚に入れっぱなしである。こいつはちょっと違ったのだ。
本書の主役は、SNCB ベルギー国鉄の蒸気機関車、12型 ……1939年製の流線形の蒸気機関車だ。その 004号車なのだ。
書名の LA DOUCE ラ・ドゥースは、仏語の douce「緩やか ; 温厚; 穏やか; 心地よい; 可愛い; 新鮮」という意味と、12型の12の douze を掛けたこの機関車の愛称のようだ。
4-4-2 という車軸配置に大きなスポーク型の動輪、そして、楯のような前頭部、縦型のスリットと連結器上という低い位置のヘッドライト、緑色の流線型の巨体……、
蒸気機関車、流線型となれば……、黙ってはいられない。
登場するのは、12形004号の老機関士のファン・ベル、そして、生れながら口のきけない若い女性エリヤだ。
ケーブルカーという新種の交通機関に、その立場を奪われて解体消滅した鉄道……、そんな架空の世界で、二人は失われた LA DOUCE ラ・ドゥースを探す……という物語なのだ。
この流線型蒸気機関車への愛に満ちた物語なのだ。