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第二次世界大戦 影の主役

BOOKS

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第二次世界大戦 影の主役―勝利を実現した革新者たち


著者: ポール・ケネディ Paul Kennedy
訳者: 伏見 威蕃

ISBN: 978-4532168865
出版社: 日本経済新聞出版社
価格: 3,675-円(税込)

私の読書の大きな部分を占めるのがドキュメンタリー、特に技術史に大いに興味を持っている。

その範疇には兵器等、戦車、戦闘機等の技術開発の歴史も、もちろん含まれているのだ。だからといって、戦争を賛美したり軍国主義的な主張を持つものではない。まぁ、宮崎駿的な矛盾を抱えてはいるのだ。

本書はベストセラー「大国の興亡」の著者 Paul Kennedy ポール・ケネディの2013年の著作 Engineers of Victory: The Problem Solvers Who Turned The Tide in the Second World War の邦訳……500頁近い大著だ。

邦題「第二次世界大戦 影の主役」に副題「勝利を実現した革新者たち」とあるが、原書の副題は The Problem Solvers who Turned the Tide in Second World War とある。

我々にとって馴染ある言葉 Problem Solvers ……問題解決者の登場なのだ。

著者は序文をこのように書き始める。

「本書では、第二次世界大戦という雄大な戦いを、まったく新しい方向から論じようと試みた。いわゆる戦史のたぐいではないし、一連の軍事行動や戦争指導者ひとりに的を絞るものでもない。それよりも、問題の解決策やそういう解決策を編み出した人々に焦点を当て、ほぼ1942年末から1944年盛夏にかけての大戦中盤を集中的に描いている。
…………
この込み入った状況を、本書では大きく五つの章で考察している。第2次世界大戦の重要な中盤に、政治指導者たちが勝利を収めることができたのは、民間と軍の両方の小規模な集団や組織のおかげだった。そういった人々の創意工夫の物語を、それぞれの章で描いた。…………
…………
…………本書で使われるエンジニアという言葉は、工学の分野の理学士や博士のみを指すわけではなく(……)ウェブスター英語辞典のより幅広い定義、” 技術や技能の工夫の才によって大きな物事を行う人間” にあてはまるだろう。……
…………」

やぁ、実に興味深い……、第二次世界大戦の考察、技術史としての展開なのだ。


目 次
    図表一覧
    序

第一章 いかに輸送船団が大西洋を無事に渡れるようにしたか

第二章 いかに制空権を勝ち取ったか

第三章 いかに電撃戦を食い止めたか

第四章 いかに敵が堅守する海岸を奪取したか

第五章 いかに”距離の暴威”を打ち負かしたか

結び  歴史上の問題解決

    謝辞
    役者あとがき
    原注
    参考文献
    クレジット
    索引


本書の展開する歴史は実に興味深いものがある。

著者は序文で、はっきりと、その勝利の成因を論じるのに還元主義的な論法を用いないと宣言している。本書の独ソ戦の章「第三章 いかに電撃戦を食い止めたか」には、ソ連軍の T-34 の存在について大いに注目するが、その質、量によって勝利を収めたというような単純な結論を主張することはない。

まぁ、本書の帯にある「勝利の決め手は 組織のミドルたちが持つ 現場力にあった!」なる、いかにも日経らしい、企業の中間層を鼓吹するような本を期待するのも……違っている……と思う。


Posted by 秋山東一 @ December 6, 2013 01:48 AM
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