ミッキーの書式 | [ BOOKS ] |
評者の阿部嘉昭・北大准教授の「『鳥獣戯画』などの鳥羽絵の伝統とポストモダンが化合して、世界に冠たるクールジャパン・コンテンツが成立したという日本中心主義的な通説に、表現史からの正論をぶつけてみせた大塚の面目躍如たる一冊だ。……」なる記述に興味を持って手にしたものだ。
著者・大塚英志……って何もしらなかったが、そういえば「ジブリの教科書1/風の谷のナウシカ」で『風の谷のナウシカ』解題なる文章を書いていたなぁ……と思い出した。
「日本以外の人々に向けて日本のまんがやアニメーションについてお話すること自体、ぼくには大きなとまどい以外のものではありません。……」と始る序は、外国の人々に向けた日本まんがアニメ史……とあるように、2012年、カナダ・モントリオールでの講演の草稿であるとのことだ。
これが分かり易い語り口で、彼の持論「戦後まんがの戦時下起源」を「ディズニーとアヴァンギャルドの野合」として語っているのだ。
自ら「おたく」を発明した本人が、その「おたく文化」を海外に売込もうなぞと、歴史まで捏造……し始めた官民の野望に鉄槌……、そんな思いのこもった42頁の「序」なのだ。
第1章 「ミッキーの書式」とまんが記号説
1 まんが記号説の起源と「略画式」的思考の近代的書き換え
2 『正チャンの冒険』とキャラクターの固有性の発生
3 「ミッキーの書式」の成立と受容
4 田河水泡とロボット・アヴァンギャルド
第2章 「科学」という統制と映像的手法の発生
1 「科学」と児童読物統制
2 小熊秀雄という問題
3 「ミッキーの書式」とリアリズムの相克
4 パノラマ漫画とパースペクティブ
第3章 「文化映画」としての『桃太郎 海の神兵』―今村太平の批評を手懸りとして―
1 「文化映画」とは何か
2 「文化映画」に於けるストーリーの排除
3 今村太平とアニメーションの国策化
補論 「戦争画」という問題
―戦時下のアニメーション、まんがとの対比で―
1 残虐さという問題
2 「ごっこ」と残虐さ
あとがき
沢山の挿絵は、その絵柄が小さいのは残念だが、貴重な画像は大いに興味をひかれる。
補論 「戦争画」という問題……、藤田嗣治の戦争画の技術論はなるほどである。そこまで云ってては……、敗戦後の日本にいられなかったのが理解である。
Posted by 秋山東一 @ July 3, 2013 10:08 AM