130507

ある明治人の記録

BOOKS

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ある明治人の記録―会津人柴五郎の遺書
中公新書


編集: 石光 真人

ISBN: 978-4121002525
出版: 中央公論新社
価格: 693-円 (税込)

内田樹のブログ「内田樹の研究室」に「東北論」なるエントリーが出てきた。

灘校生のインタビューに答えたという形のものだが、震災から始り、原発、グローバル経済、戊辰戦争……と縦横無尽に東北が語られる。大いになるほどなのだ。

そこに、こんなくだりがある。

……

―原発の話にもどるんですが、原発って、東京で消費する電力を、福島で作ってたわけですよね。東京の犠牲になっていたわけですよね。なんでそういうシステムが生まれてしまうのでしょう。

戊辰戦争ですよ!決まってるじゃないですか。戊辰戦争で、奥羽越列藩同盟が賊軍になって、それからあと150年間、中央政府によって有形無形の差別を受けてきたからですよ。東北の出身者は中央に上がっていけなかったんですよ。政界でも官界でも財界でも・・・。
……
―それは今の官僚であるとか政治家とかも、意識して政治を行ってるのですか。

いや、意識はしてないでしょう。むしろ無意識だからこそ、こんなひどいことができる。150年間、ずっと無意識なまま東北は抑圧されてきた。君たちも東北人の証言には耳を傾けるべきだと思う。ぜひ読んでおいて欲しい本がある。『ある明治人の記録』。旧会津藩士ではじめて陸軍大将に昇進した柴五郎の伝記。会津が明治政府にどんな目に遭わされたか、わかるよ。
……

ぜひ読んでおいて欲しい……、と言われれば、即、読みたくなって図書館を探してみたのだ。


目 次
    本書の由来
第一部 柴五郎の遺書

    血涙の辞
    故郷の山河
    悲劇の発端
    憤激の城下
    散華の布陣
    狂炎の海
    絶望の雨夜
    幕政最後の日
    殉難の一族郎党
    捕虜収容所へ
    学僕・下男・馬丁
    地獄への道
    餓死との戦い
    荒野の曙光
    海外か東京か
    新旧混在の東京
    わが生涯最良の日
    国軍草創の時代
    会津雪辱の日
    維新の動揺終る

第二部 柴五郎翁とその時代

    遺書との出会い
    流涕の回顧
    翁の中国観
    会津人の気質
    痛恨の永眠

    柴五郎氏略歴


会津が薩長土肥の明治政府にどんな目に遭わされたか……、その歴史よく分かったのであった。

この会津人・柴五郎なる人物が、義和団事件の北京籠城「北京の55日」の指揮官であった日本軍人とは知らなかった。彼は最終的に日本帝国陸軍の大将に上りつめ、1945年の太平洋戦争敗戦後、87歳で自決を図るが果たせず、その三ヶ月後死去する。

戊辰戦争、新政府軍の会津への侵攻時、柴五郎は10歳であった。会津陥落時、城下の祖母・母・兄嫁・姉妹が自刃する。その後の会津藩は、陸奥国斗南(現・青森県むつ市)に移住し、餓死寸前の窮乏に陥る。

その後、青森県庁の給仕、東京流浪なる辛酸……、1873(明治6)年、陸軍幼年学校、1877(明治10)年、陸軍士官学校、西南戦争終結し「維新の動揺終る」で、少年時代の回顧を終えるのだ。


追記 130507

内田樹の「原発があるのは戊辰戦争のときの賊軍側の藩ばかり、という話……」からエントリーしたものがあった。
 ● aki's STOCKTAKING: 原発のある場所


Posted by 秋山東一 @ May 7, 2013 02:05 AM
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