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石川初 | ランドスケール・ブック ― 地上へのまなざし

BOOKS

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石川初 | ランドスケール・ブック ― 地上へのまなざし
現代建築家コンセプト・シリーズ

著:石川 初
編集:メディア・デザイン研究所

ISBN: 978-4864800013
出版社: LIXIL出版

価格: 1,890-円(税込)

著者・石川初氏には、お会いしたことはないがニアミス状態がかってあった……。

氏に対して妙に親しさを感じるのは、私たち仲間の JEDI の活動と並行してあったスリバチ学会や、氏のブログ「身辺メモ」をよく読んでいたことにある。

氏はランドスケープデザイナー、ランドスケープアーキテクト……であるが、それもデジタルなお道具を駆使する造園家……というべき人なのである。

「今和次郎「日本の民家」再訪」は、まだ読んでいないが、本書を……、初めて手にした氏のご著作……、大変面白く見ているのである。


 目 次
序 YOU ARE HERE 自分の位置をマッピングすること

第一章 地形のスケール
 等高線の彩色、地形を擦りだす地図/アナログなデジタル化ーコンピューター模型
 平野の由来
 モザイク地形ー地面の都市化/ニュータウンの丘陵/構造物の「地形認定」
 地面の年輪 ほか

第二章 地図のスケール
 地図のルール、地面のルール/地下鉄の地図、インフォグラフィクス、皇居の表示
 路線図がもたらす都市の地理感覚/鉄道と道路ーつり革の都市と実空間
 ナビゲーションとマッピング/日常のログ、地面の記録/GPSログの逸脱/ネコログ
 時層地図ー現在地、、現在時間/ダイアグラムと地理ーバスの路線図 ほか

第三章 時間のスケール
 地質学的時間感覚/温室が作る時間/園芸の楽しみー時間芸
 植物の「時差ボケ」が映し出す、遠い原産地の季節/ソメイヨシノの時間
 音声散歩「15分前の街」/時層写真/時間の単位、時間の形/ブランコの時間性 ほか

第四章 境界のスケール
 境界を持った領域としての「水平の床」/地球上のさまざまな「水平」
 外部から見た都市/生け垣ーたゆまぬ境界の維持
 私道の論理ーオープン外構を支えるクローズド街区
 都心の里山ー原宿駅の林縁部/ベンチの周辺性/乗り換えのバリア ほか

第五章 庭のスケール
 都営スタイル/パーソナル・ナショナルガーデン/裏庭のコミュニティ
 植栽基盤単位としての植木鉢/原風景の陥穽/7人の小人問題
 ガーデニングー自然との終わりなき葛藤と屋外空間の「最適化」
 「人工地形」が封印する土地の歴史/森という「外部」 ほか

略歴


一つ一つ独立した思考の断片、壮大な構想から、路傍のナガミヒナゲシのことまで、最後は「取るに足らないものたちの観賞ガイド」へと連なる。

本書は「現代建築家コンセプト・シリーズ」の第一冊だそうだが、本の作り方が面白い。それが本シリーズ共通の仕掛けなのか、本書だけのものかは知らないが、時間軸を除いたブログそのものなのである。

各コンテンツは各々独立、大小、高低等々は意識されずに、章立てによって括られる。これはカテゴリーによって括られたエントリーの数々……というブログそのものなのだ。これは、氏のコンセプト群を披瀝するのに相応しい仕掛け……ではないか。

ふと、これは、石川初氏の「在庫品調査」……、STOCKTAKING なんだと思ったのだ。


Posted by 秋山東一 @ October 5, 2012 11:48 AM
Comments

これはブライアン・イーノの1970年代後半から1980年代前半に掛けてリリースされたアンビエント・シリーズのLPジャケット(地形図がモチーフに使われている)を彷彿とさせる表紙デザインですね。

Posted by: iGa @ October 6, 2012 10:16 PM

石川さん、ごぶさたです。いい本ですね……、実に軽やかで若々しい。
一度、近々……、先輩でランドスケープデザイナーである内藤恒方氏の展覧会のオープニングパーティで……なんてどうですか。14日午後4時下北沢です……。直接連絡します。

Posted by: 秋山東一 @ October 5, 2012 12:23 PM

ありがとうございます!頂いた最後の一行、鳥肌立ちました。ご指摘の通り、編集作業はまるで自分の在庫を「調査」するような気分でした。以前のニアミス時にお会いできず残念でしたが、ぜひ機会を得ましてお目にかかりたく思っております。

Posted by: 石川初 @ October 5, 2012 12:14 PM