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火山のふもとで

Architecture , BOOKS , Mag

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新潮 2012年 07月号



ASIN: B0083IFS3K
出版社: 新潮社

価格: -----円(税込)

いつもは、このような文芸雑誌を手に取ることはないが、そこに掲載された小説が読みたくなってしまったのだ。

デビュー作・一挙650枚……と喧伝されている、松家仁之 (まついえ・まさし) 「火山のふもとで」という長編小説なのだ。

先生は、小さな声で呟くように、建築史に残る建物を生み出す。生を豊かにする空間とは?
浅間山のふもとの山荘で、設計コンペの戦いとロマンスの時が静かに深々と刻まれるーー。
超大型新人デビュー!

これが、建築設計業界でに大いに話題……、そこに登場する二人の建築家のモデルは、吉村順三と丹下健三……なのだそうだ。

情報通のの吉松翁がこの話しを教えてくれたのだが、それは読んでみなくちゃ……なのだ。それに、松家仁之氏は芸術新潮の編集長……、それによく存じ上げている建築家・松家克氏の親戚筋というではないか。

・・・・・
650枚……、結構読みでのある大部な小説であった。

建築家小説というべきか、建築設計小説と呼ぶべきか……そのようなジャンルの存在を感じさせる……、もちろん、面白く読んだのである。

学校を出たばかりの一人の青年・坂西徹が、建築家・村井俊輔の事務所である村井設計事務所に入所する。
折から、国立現代図書館なる施設の指名コンペティション、その相手は船山圭一建築研究所(丹下健三がモデル……)だ。その作業が、浅間山麓の夏の事務所で始まるのだ。

所長。スタッフによって演じられる「設計事務所物語」であり、コンペの為に図書館を設計する「設計物語」であり、浅間山麓の「歴史物語」であり、その「自然物語」でもある。そして、その主人公の「恋愛物語」でもあるのだ。

そんな沢山の物語が入れ子になり、繋がり合ったのが、この小説なのだ。

村井が建築に関して語る言葉が沢山あるが、吉村順三をモデルにしているのは明らかだ。

そして、話し方自体にも吉村を感じる。私が芸大の建築科の生徒だった時、彼が質問する時の「何々なのかい」という言葉は何回も聞いている。本書の村井が事務所スタッフに質問する時の言葉だ。

本書の最大の無理は、建築家・村井俊輔をフランク・ロイド・ライトの弟子、タリアセン出身者とすることにある。吉村的な考えは決して、ライト的なところから出てくるわけではないし、吉村順三は決して「有機的」なんて言わない。


追記 121112

単行本となって発刊されている。

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火山のふもとで


著者: 松家 仁之

ISBN: 978-4103328117
出版社: 新潮社

価格: 1,995-円(税込)

Posted by 秋山東一 @ September 3, 2012 11:54 AM
Comments

昨日のの東京新聞朝刊の読書欄の「書く人」に著者が紹介されてましたね。

Posted by: iGa @ October 8, 2012 11:14 AM

そうそう、我らがお内裏様とお顔だちも大分違いました。それでも紀伊半島を代表する名家、あちらも何処か上品な風情でした

Posted by: shin @ September 4, 2012 08:31 AM

shin さん、どうもです。
そうだったんですか、存じ上げている松家さんの弟なんて云ってしまった。訂正訂正……です。

Posted by: 秋山東一 @ September 4, 2012 08:02 AM

こちらの松家さん、先日御代田で初めて会い、ご挨拶しました
われらが松家さんお従兄弟か「はとこ」だったようです
この御代田に吉村さん設計の「ほしはな保養所」あり、松家家あり、中村好文家ありで、みなさんで集落をなしてます

Posted by: shin @ September 4, 2012 12:38 AM