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アランの戦争

BOOKS

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アランの戦争―アラン・イングラム・コープの回想録
 BDコレクション

著者: エマニュエル ギベール EMMANUEL GUIBERT
訳者: 野田 謙介

ISBN: 978-4336052940
出版: 国書刊行会

定価: 2,625-円(税込)

国書刊行会の「BDコレクション」の一冊だ。

この BD とは、バンド・デシネ(bande dessinée)のことだ。ベルギー・フランスを中心とした地域の漫画のことである。日本の漫画とも、米国原産のアメリカン・コミックスとも異なる。古くは「タンタン」……、そして、メビウスに代表されるが、各種各様の作品があるのだ。

日本の今風漫画とはちょっと印象が違う……、ハードカバーで判型が大判の所為か絵が丁寧な感じで、あまり動きを強調することなく静かな……表現なのだ。時折、洋書コーナーで見て、フランス語読めないけど……絵本として手にしていた。

最近、それらの邦訳本が各種でており、気になっているのだ。しかし、これって実物がどこの本屋に置いてあるというわけではないから……、見てから手に入れるというわけにもいかないところが、ちと辛い……。本書は、エイヤ……と amazon から購入したのだ。

これがなかなか、いい本だったのである。

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作者・ギベールはある日、一人の米国人と出会う。Alan Cope アラン・コープという老人だ。彼との親交が始まり、彼の戦争体験を聞いたギベールは BD にすることを申し出る。ギベール30歳、アラン69歳の時だった。

アランは1925年生れ、第2次世界大戦に時代、多くの米国青年と同じく軍に志願し訓練を受け兵士となる。戦争終結直前の1945年1月に偵察隊の一兵士として仏に上陸、ちょっと奇妙な戦争体験をおくる。それはまさしく戦争ではあるが、彼は戦闘に関わることなく装甲車に乗って東に進行、チェコのプラハにまで至るのだ。
本書は、アランが訓練で出会った戦友達、フランス・ドイツ・チェコへの進軍で知り合った人々との交友――それを振り返るアランの声で淡々と、ユーモラスに語られていくのだ。

抑制された筆致で、戦争のなかの日常の記憶がアランの声によって再生していくのだ。それもすこぶる精密に……。

私は漫画を好んで読むわけではないので、何の比較の対象を持ち合わせているわけではない。しかし、漫画というかバンド・デシネというものの可能性に感動したのであった……よ。

Posted by 秋山東一 @ August 21, 2012 04:40 AM
Comments

yum さん、どうもです。
このような漫画の話にご興味があるとは思ってもみませんでしたが、Youtube での話題ですか。しかし、この人の絵……うまいもんですね。

Posted by: 秋山東一 @ August 23, 2012 09:43 AM

ギベールは、水を使ってこんな不思議な画の書き方をしていたんですね。
http://youtu.be/zIMdBK8yr_g

本人のご尊顔はこちら
http://youtu.be/Y6RLJ4PgPcY

Posted by: yum @ August 21, 2012 06:17 AM