111209

人生の奇跡 J・G・バラード自伝

BOOKS

448801528X.jpg


人生の奇跡 J・G・バラード自伝

著者: J・G・バラード J.G. Ballard
訳者: 柳下 毅一郎

ISBN: 978-4488015282
出版: 東京創元社

価格: 2,310-円(税込)

私の大好きな小説「太陽の帝国」の著者、 J・G・バラードの自伝だ。彼は本書を最後に、2009年4月、前立腺癌によって死去している。

「太陽の帝国」自体、自伝的……と言われている通り、彼は1930年上海生まれ……、幼少期から少年時代、第二次世界大戦の上海、日本軍によって占領された収容所生活を経て解放されるまでの話だ。

この自伝においても、その半分が、上海時代の記述に費やされているのだ。その少年期こそ、バラードをSF小説に革命を起こし「内宇宙」なる概念によってニューウエーブを起こす原点が上海にあったことを明らかにしている。


目次
第一部

第一章 上海生まれ(1930)
第二章 日本の侵略(1937)
第三章 欧州大戦(1939)
第四章 両親
第五章 真珠湾攻撃(1941)
第六章 龍華収容所(1943)
第七章 チェス、退屈、ある種の疎外(1943)
第八章 アメリカの空爆(1944)
第九章 鉄道駅(1945)
第十章 戦争の終わり(1945)

第二部

第十一章 雄々しく耐える(1946)
第十二章 ケンブリッジ・ブルース(1949)
第十三章 叫ぶ教皇たち(1951)
第十四章 決定的出会い(1953)
第十五章 人生の奇跡(1955)
第十六章 これが未来です(1956)
第十七章 賢明な女たち(1964)
第十八章 残虐行為展覧会(1966)
第十九章 癒しの時間(1967)
第二十章 新しい彫刻(1969)
第二十一章 ランチと映画(1987)
第二十二章 上海への帰還(1991)
第二十三章 家路について(2007)

 訳者あとがき
 J・G・バラード著作リスト


スピルバーグの映画「太陽の帝国」でも垣間見せられた上海の光景、それが少年の目で見たそのままが彼によって語られる。彼と両親との英国中産階級的なスタンス、それは収容所内でも変わることはない。「太陽の帝国」が孤児の物語として語られることの理由がよく分かる。

しかし、「太陽の帝国」が絶版……、最近の新訳ブームにあやかって、ちゃんとした翻訳で出版してほしいものだ。

ジョブズの伝記を読んだばかりだが、本書の中に自身の子供の為に自身の記録を残す……、バラードも同じ事を書いている。

Posted by 秋山東一 @ December 9, 2011 04:34 AM
Comments

玉井さん、遠いところから……どうもです。
それは残念……。しかし、もうお戻りでしょう。
本書の半分、彼の少年時代、上海の話で読了……なんて思っていたの大間違い、その後のケンブリッジの医学生、そして作家となり……、実に面白く読みました。

Posted by: 秋山東一 @ December 10, 2011 10:21 AM

旅の友に最適だと思ってもってこようと思っていたのに
忘れちゃって、残念至極
植民地に住む宗主国の人間たちというのは
いやなやつになるのと魅力的なやつになるのがあるように思います
というのは、数冊の小説からの印象ですが
「アフリカの日々」を読んだときにとりわけそれを感じました
このひとは魅力的になる方の人間だと、太陽の帝国を観て思いました

Posted by: 玉井一匡 @ December 10, 2011 09:39 AM