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パイド・パイパー

BOOKS

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パイド・パイパー -自由への越境
創元推理文庫


著者: ネビル・シュート Nevil Shute
訳者: 池 央耿
ISBN: 978-4488616021
出版社: 東京創元社
価格: 735-円(税込)

時に、本屋で表紙だけ見て文庫本を手にしてしまう事がある。創元推理文庫のこの一冊もそうだ。
パイド・パイパーという書名も、さて……という感じだが、老人と子供二人がいて、その前方にはタンクが……、これは奇妙な絵柄であるのだ。これだけでも興味津々……早速レジに向かったのだ。

このパイド・パイパーなる小説の作者は英国人作家ネビル・シュート……、映画「渚にて」の原作 On the Beach の作者として著名なのだが、映画を知っていても……何も知らなかったなぁ。

本書は1942年出版……私の生まれた年、第二次世界大戦中なのだ。

一人の70歳になる英国人老紳士の休暇……、息子の戦死に傷ついた自身の心を癒すため、フランスの片田舎に釣りにやってきたのだ。1940年春、彼はロンドン出発した。その時、ナチス独軍はデンマーク、ノルウェーに侵攻、彼はパリを経由して、スイス国境に近い目的地シドートン到着し、そこでの釣り三昧の生活を始めた。

ほどなく、ナチス独軍の進攻はオランダ、ベルギーに向かう。そして、フランス東部に侵攻し英仏連合軍を英仏海峡まで追いつめ、連合軍はダンケルクから英国に撤退する事態になってきた。

予想以上の侵攻の早さに、ついに、彼は英国に戻る決心をした。その時、ホテルに同宿のジュネーブ在の国際連盟職員夫妻の幼い兄妹を英国に連れていって欲しいと懇願されるのだ。幼い二人と老人の旅の始まりとなる。
まだまだ、時間はあると思われ容易に英国に帰国となるはずだったものが、ちょっとしたつまずきと、独軍の電撃的なスピードによって……、結局は独軍に占領されたフランスを細切れの交通機関と大部分徒歩で、横断せねばならなくなったのだ。

本書の題名「パイド・パイパー」は、ハメルンの笛吹男のドイツ民話だが、本書にその名を付けた意味がわかるのだ。
独軍が侵攻しているという状況の中、先の情報もなく、子供達を引き連れて歩いていくという道行きにハラハラドキドキの連続、地図をみればスイス国境の山の中から英仏海峡までフランス横断の旅であるのだ。そして、ちょっと恋愛小説でもあるところなんぞ、面白く読んだのであった。

これは名作……、冒険小説の古典というべきものではないか……と思う。

Posted by 秋山東一 @ January 13, 2011 12:08 AM
Comments

tanaka-kinoie さん、ごぶさたいたしております。ご活躍はブログにて拝見いたしております。
そうそう、ありましたですね。入った事はありませんが、思い出しました。当家では愛猫の名前がパイパーだったものですから、反応してしまうのでありました。

Posted by: 秋山東一 @ January 13, 2011 09:15 PM

AKI先生 ご無沙汰しております。
パイド・パイパーという言葉に反応してしまいました。
どこか聞いたことがある名前だと先程までモヤモヤしておりましたが青山傳八前にあった
今は無き、レコードハウスがパイド・パイパーハウスだったと記憶しております。
20年以上も前になりますがたまに通っておりました。
すいません 本題と違うのですがパイド・パイパーの意味もわかりまして、懐かしい思い出もよみがえりありがとうございました。

Posted by: tanaka-kinoie @ January 13, 2011 07:11 PM