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経度への挑戦

BOOKS

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経度への挑戦
角川文庫

著者: デーヴァ・ソベル Dava Sobel
訳者: 藤井 留美
ISBN: 978-4042982081
出版社: 角川書店
価格: 620-円(税込)

原題は Longitude(経度)と素っ気ないが、 The True Story Lone Genius Who Solved Greatest Scientific Problem his Time なる副題……、「その時代最大の科学的問題を解決した孤独な天才の真実の物語」というのが本書だ。

時は18世紀、ヨーロッパでは「大航海時代」を経て海洋交易が振興する一方で、多くの海難事故で数多の生命、財産が失われていた。それは航海において「正確な経度を測ること」の術がないことに起因していた。

1714年、英国議会は「実用的かつ有効な」経度測定方法の考案者に対し莫大な賞金を与えるという「経度法」が施行されたのだ。一等賞から三等賞まで、その誤差の精度によって賞金は異なっていた。まだ、ニュートン、ハレーの時代、そのコンテストはその時代の大いなる挑戦であったのだ。

その解決法の大勢は天文学による……であったが、精密な時計……クロノメーターを作ること……が解決法となってくるのだ。大工上がりのの時計職人、 John Harrison ジョン・ハリソンがそれを作りだすのだ。


目次
 第1章 仮想の線
 第2章 時のない海
 第3章 時計仕掛けの宇宙
 第4章 びんのなかの時間
 第5章 井感の粉
 第6章 賞金
 第7章 歯車作りの日記
 第8章 バッタ、海に飛びだす
 第9章 天の時計
第10章 ダイヤモンドの時計
第11章 火と水の試練
第12章 二枚の肖像画の話
第13章 ジェームズ・クック二度目の航海
第14章 大量生産へ
第15章 子午線の中庭で

    謝辞
    参考文献
    訳者あとがき


本書は1997年に単行本として刊行されたものを文庫本化したものだ。いやぁ、小さな本だが、実に面白く……あっというまに読了だ。

時計という機械がこのようにして作られてきたのか。ジョン・ハリソンの H1, H2, H3, H4 という時計を進化させていく過程、天文学こそ経度測定の本命と信ずるアカデミズムとの闘い……手に汗握る……物語なのだ。

自分自身もクロノメーターの名前が小さく付いた腕時計 GMT MASTER を、朝、竜頭を引いて秒針を止め、時間に合わせるのを習慣としている。なぜ、機械でなければならなかったのか、機械式時計の紀元がこのような大事にあることを知ったのであった。

ちょっと、英国ロンドン・グリニッジ天文台に行って子午線をまたいだり、ミュージアムで 彼の作った時計、Harissons といわれる時計を見てみたい……と思ったのだ。

Posted by 秋山東一 @ July 29, 2010 10:12 AM
Comments

玉井さん、どうもです。
私も同じく……こんなことを知らなかったのを驚きました。
我々が時差を調べるのにメルカトル図法の世界地図で経線上に時差を読んでいるわけだが、それと反対に時差が分かれば経度が分かる……ということだった。それには航海の時間に耐えられる正確な時計、クロノメーターが必要だったのですね。
経度0、それがグリニッジ天文台にある子午線……そこの時間がグリニッジ標準時……Greenwich Mean Time、そんな伝統を内蔵した24時間針を持った時計を使いながら……その所以、その歴史を知らなかった……、恥じるものです。

Posted by: 秋山東一 @ July 30, 2010 09:46 AM

うーむ
我ながら驚きました。そんなことを知らなかったというか気づかなかったということにです。
・・・つまり、自分のいる場所の緯度は北極星、南十字星の位置でわかるけれど、緯度は時計が時計がなければわからないということ。
 はずかしいというより、そういうことを知ってとてもうれしいなあ。いつだったか、時差ってうまい具合に一時間単位なんだということに気づいて、なぜだろうかと考えていたら、それぞれの国の時刻と標準時との差を一時間単位で決めたからだということにもう一度気づいたことがあって、とてもうれしかったことがあります。
あのときによく似たうれしさです。もっとも、時計のことはこのエントリーで知ったのですが。しかし、正確な時計がないときは、航海士たちはどうやっていたのかは考えてもわかりそうもない。
この本を読めばいい、ということですね。

しかし、インターネットがあると、疑問はすぐに調べられるから、こういう素朴な疑問のこたえに自分で出くわすという喜びがなくなるんでしょうね。

Posted by: 玉井一匡 @ July 30, 2010 03:28 AM