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創るセンス 工作の思考

BOOKS

4087205312.jpg創るセンス 工作の思考
 集英社新書

著者: 森博嗣

ISBN: 978-4087205312出版: 集英社

価格: 735-円(税込)


本書は、昨年同じ集英社新書から出版された「自由をつくる自在に生きる」と一緒に、昨年の夏に急に思い立って書かれたものだそうだ。自由を……は「自由論」、そして本書は「工作論」というのが原題だそうだ。

本の題名を売らんかな…のつもりで、いじるのが出版側の癖のようだが、訳の分からない題名よりも、同じ訳が分からんと言われても「工作論」の方がずっと相応しい。

本書は工作少年たる森博嗣が、工作について論考したものである。

「工作」を楽しみ、それを成す人はいても、工作の哲学、工作の考え方を語れる人は数少ない。いままで、唯一、本ブログのエントリー「Armchair Modeler」の平岡幸三氏が語られたことしか記憶にない。


目次
   まえがき
1章 工作少年の時代
2章 最近感じる若者の技術離れ
3章 技術者に要求されるセンス
4章 もの作りのセンスを育てるには
5章 創作のセンスが産み出す価値
   あとがき

今、50代初めである著者の工作少年の日々から、大学の教官をしながらの作家としての生活のなかでの工作の日々、そこで培われた「工作」の哲学が語られていく。その言葉の端々に同意したくなる話がある。

「おそらく、工作のセンスというのは、一つにはこの「映像による思考力」だと思われる。……」、この映像による……を、私はグラフィカルな記憶と呼んでいるが、その言語による……とは異なる構造的に差のあることなのではないか。
彼は小説を書くことについて工作と同じ方法であることを明らかにする。「……工作でも、僕はこの方法で作っている。作りながら考えるし、作っている最中に思いつくアイディアばかりだ。」、これはまさしくブリコラージュだ。

そして、工作する理由を「……となると、いったい誰のどんな評価を期待しているのか。僕は、それを「工作の神様」と呼ぶしかない、と考えるに至った。子供のときに、そう結論したのである。……」と書く。そう、まさしく、我が内なる「工作の神様」に忠実であることが、物を作り作り続けられるのではないか。

Posted by 秋山東一 @ February 22, 2010 12:16 AM
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