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46年目の光

BOOKS

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46年目の光 ―視力を取り戻した男の奇跡の人生

著者: ロバート・カーソン Robert Kurson
訳者: 池村 千秋

ISBN: 978-4757150607
出版社: NTT出版
価格: 1,995-円(税込)

化学薬品の事故によって3歳で視力を失ったマイク・メイなる人物が、46年ぶりに視力を取り戻すというノンフィクションの物語だ。

盲目でありながら生来活動的な彼は、健常者と変わりない生活をおくり、実業家としての成功をおさめ、妻と二人の子供の温かな家族に恵まれ幸せな生活を送ってきた。
そんな彼が46才の時、偶然に診察を受けた眼科医に、幹細胞移植という最新の目の手術を受ければ「視力を取り戻せるかもしれない」という話を聞く。

しかし、その手術には数々のリスクが伴う。成功の可能性は50%で、将来的に拒絶反応が起こる可能性が存在する。どの程度の視力が回復するかは不明で、もし、手術が失敗すれば現状の光を認識する能力も失う。拒絶反応を抑止する治療は副作用が大きく、癌を発症する可能性がある。

そして、今の満ち足りた生活が変わってしまう心配……、しかし、彼はその手術を受けることを決意する。それは「見える」ということは何なのか、どうなのか……その好奇心が、彼を手術へと向かわせた。


目次
 第1章 人生になんの不足もなかった
 第2章 子供時代
 第3章 成功の可能性は五分五分
 第4章 体当たりで生きてきた
 第5章 やめておくべき理由はたくさんある
 第6章 運命の出会い
 第7章 プラスの箱とマイナスの箱
 第8章 光が見える!
 第9章 息子のそばかす
第10章 視力は、想像したよりずっとすごいものだった
第11章 どうしてうまく見えないんだ?
第12章 認識の重労働
第13章 猫の脳とピカソの目
第14章 「見る」ことの仕組みを科学する
第15章 ニューロンは戻ってこない
第16章 道はかならず開ける
第17章 奇跡
     エピローグ

     謝辞
     出典について
     訳者あとがき


幹細胞移植手術、その4ヶ月後、角膜移植手術は順調に終わる。手術の翌日、検査に訪れた診察室でそれは起こる。まぶたを開けた目に起こった「白い光の洪水…………」それが、46年ぶりに取り返した視力だったのだ。

しかし、その目によって見えるということと、頭によって見えるということは大いに異なるのだ。視力を取り戻してからの彼の苦闘は続くのだ。第13章から第15章にかけて、かれの実際に受けた研究者による検査と、「見る」ということは、どういうことなのかという科学的な話によって、本書は唯のノンフィクションの物語に終わらない。

最後に、癌、拒絶反応を克服し、新しい「見る」能力を獲得していくマイク・メイがいる……、実に面白いノンフィクションであった。

Posted by 秋山東一 @ January 16, 2010 08:47 AM
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