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J・G・バラードの千年王国ユーザーズガイド

BOOKS

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J・G・バラードの千年王国ユーザーズガイド 

著者: J・G・バラード James Graham Ballard
訳者: 木原 善彦

ISBN: 978-4826990462
出版社: 白揚社
価格: 2,520-円(税込)

今年の4月19日、「太陽の帝国」の作家 J・G・バラードが、78歳で死去した。2006年に前立腺がんの診断を受け闘病生活を続けていたんだそうだ。

2007年には、カート・ヴォネガットも逝っちゃっているし、いわゆるSF作家にジャンル分けされている作家だが、私の好きな作家がいなくなってしまったのは実に寂しい。

本書はバラードが1963年から1995年の間に書いた書評とエッセイを90編以上も集めたものだ。さしずめ、バラードの二十世紀事象批評集というべきものなのだ。
そして、本書は2003年に出版された同名のものの新装版、バラードの逝去を弔っての出版なのであろう。


目次
1 映画
2 伝記
3 視覚芸術
4 作家
5 科学
6 自伝―上海からシェパートンへ
7 サイエンス・フィクション
8 エトセトラ
9 自伝―太陽の帝国の記憶

読書案内
訳者あとがき


本書を手に取って、最初に読んだのは第9章の「自伝―太陽の帝国の記憶」だ。そこには「私の終戦」と題する Sunday Times に1995年に寄稿した一文があるだ。「太陽の帝国」という題名は大日本帝国を指しているのだが、最後に「……しかし、戦争を生き延びるためには、とくに民間人として生き延びるためには、戦争によって強いられるルールを受け入れ、さらに私がしたように、そのルールを歓迎しなければならないのである。」と締めくくっている。

本書「J・G・バラードの千年王国ユーザーズガイド」もバラード好きにはとても素敵な本だけれど、本当は故 J・G・バラードを弔って、Empire of the Sun を、ちゃんとした日本語の邦訳本「太陽の帝国」として出して欲しいと思うのは……私だけではないんじゃないかと思っているのだ。

彼の自伝的な物語である「太陽の帝国 」が、スピルバーグの映画の題名になってしまうのは、あまり面白くないのである。

Posted by 秋山東一 @ December 30, 2009 12:15 AM
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