牛を屠る | [ BOOKS ] |
本書の帯にある、「ここはおめえみたいな奴の来る所じゃねぇっ!」こそ本書が生み出された理由ではないかと思う。
著者・佐川光晴氏は北大の法学部を卒業後、就職した出版社を一年で退職し、大宮の屠殺場(とさつば)に再就職し、十年半にわたってナイフを握って屠殺の最前線で「牛を屠る」を成してきたのである。
外側から「屠畜」なる「屠殺」の世界を書いているものはあっても、その内側、それを職能とした者が書いた「屠殺」の本は初めてではないのか……。
1 働くまで
面接の日
両親
2 屠殺場で働く
怒鳴られた初日
昼食と帰宅
ナイフ
尻尾を取る
牛に移る
牛を叩く
妻
3 作業課の一日
始業前
面皮剥き
エアナイフ
テコマエ
足取り
4 作業課の面々
共通の心性
入社のきっかけ
健康保険証
結婚
余禄
5 大宮市営と畜場の歴史と現在
芝浦VS大宮
F1とガタ牛
オッパイの山
「逃げ屋」と「まくり」
屠殺と屠畜のあいだ
ケガ
6 様々な闘争
賃金をめぐる闘い
将来をめぐる闘い
理由との闘い
偏見との闘い
7 牛との別れ
O-157の衝撃
「生活の設計」が誕生するまで
退社
8 そして屠殺はつづく
[イラスト]佐川光晴が2001年まで働いていた大宮市営と畜場(当時)の牛の作業場
本書の骨子は、これも帯にある本書からの抜粋の一文によって凝縮されているという気がする。
……仕事を選ぶよりも続けるほうが格段に難しい。そして続けられた理由なら私にも答えられる。屠殺が続けるに値する仕事だと信じられたからだ。ナイフの切れ味は喜びであり、私のからだを通り過ぎて、牛の上に軌跡を残す。……
氏の処女作、単行本「生活の設計」は既に絶版で、双葉文庫の「虹を追いかける男」に所収されている。
MyPlace の玉井さんがお読みになってエントリ—された。 ● 牛を屠る
Fumanchu 先生、どうもです。
いろいろ学んでおられますですね。豚でも生存に危機に際しては、そのような行動をとるのですから、我が人類も「欲情の作法」なんぞと気取ってみても、同じくでありましょう。
学生時代に「消費者自給農場」の手伝いをしたことがあり、立木にひもで繋いでおいた牛が首をくくった時には、そのままバラしてしまいました。屠場法違反でしょうね。歩いている豚を精肉にするのは土浦の屠場へつれて行きました。前の方で仲間が首筋に電気ショックをもらっているのを理解すると、目の前に居る仲間が牡であろうと牝であろうと、かまわずまたがって腰を振るのです。えっちの元は金玉ではなく、脳みそに蓄えられていることを学びました。
那覇の山羊屋で隣の客に聞いたのは、「復帰前は青年団で「飲む」というと、山羊にひもを付けて引っ張って来たんだが、復帰後が保健所がうるさくなって。」