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「地震予知」はウソだらけ

BOOKS

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「地震予知」はウソだらけ
講談社文庫

著者: 島村 英紀

ISBN: 978-4062761703
出版: 講談社
価格: 750-円(税込)

地震学者・島村英紀氏は「私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか。」の最終章「控訴断念」に次のように書いている。
......................................
 それだけではない。日本政府の言い分通り、地震予知ができる、と信じ込まされている日本人たちが、もし地震予知ができずに大地震の不意打ちを食らったら、災害がより拡大する恐れが高い。そうまでして、真実を隠そうとする政府の意図は、私には計りかねる。
 私は思っていたよりもずっと大きなものの尻尾を踏んでしまったのではないか、その黒い手と、この裁判で闘っても無駄だよ、というのが私の友人の忠告であった。
......................................

「尻尾」とは、氏がはっきりと不可能であると指摘している「地震予知」の問題に他ならない。
……となれば、氏が2004年2月に出版した『公認「地震予知」を疑う』を読んでみようと考えたが、同書は改訂版として2008年11月に講談社文庫の一冊として『「地震予知」はウソだらけ』として出版されているのだ。


目次
 まえがき
 Ⅰ 琵琶湖の活断層、対応しようもない数字
 Ⅱ あいまいな仮定、あいまいな発生確率
 Ⅲ この本を書いた動機
 Ⅳ 本書はなにを言いたいのか
 フィクション―201X年夏■ Part 1

第Ⅰ章 地震が予知できない理由
 Ⅰ 天気予報と地震予知はレベルがちがう
 Ⅱ 海溝型地震だけは、やがて起きることがわかっている
 Ⅲ 歴史から消された「前兆」
 Ⅳ 地震が起きてからの「前兆」報告
 Ⅴ 地震予知が輝いていた時代
 Ⅵ 地震予知のバラ色は消えてしまった
 Ⅶ 「自己申告」の前兆は誰も評価できない
 Ⅷ 日本だけが突っ走る地震予知

第Ⅱ章 世界最初の地震立法ができてから
 Ⅰ 地震予知はここからはじまった
 Ⅱ お役所の縄張り争いがスタート
 Ⅲ 急増した地震予知の予算
 Ⅳ 急ごしらえの地震立法
 Ⅴ 旧帝大だけが優遇された
 Ⅵ 学会はなにをしていた?
 Ⅶ メディアはなにをしていた?

第Ⅲ章 阪神淡路大震災。お役人の変わり身
 Ⅰ 阪神淡路大震災の衝撃
 Ⅱ 阪神淡路大震災、役人の対応ぶり
 Ⅲ 縄張りを死守するお役人たち
 Ⅳ 原子力の失点を救った地震予知
 Ⅴ 地震予知の「身代わり」、2本の柱
 Ⅵ 海溝型地震の確率もあいまい

第Ⅳ章 不意打ち対策へのシフト
 Ⅰ 「地震対策大綱」で不意打ち対策に「シフト」
 Ⅱ 新顔プレスリップの登場
 Ⅲ 判定会が頼るのはカンだけ
 Ⅳ プレスリップの場所によっては地震予知はお手上げ
 Ⅴ プレスリップかどうか判断できない例が多発している
 Ⅵ 気象庁の「体質」

第Ⅴ章 「東海地震対策大綱」が「大震法」を上塗りしたために
 Ⅰ 公認の被害想定とは
 Ⅱ 原子力発電所は耐えられるのか
 Ⅲ 政府は個人を支援しない
 Ⅳ 東海地震対策大綱と地震警報の矛盾
 Ⅴ 弱者が切り捨てられる震災
 Ⅵ 緊急地震速報という方便

第Ⅵ章 地震という妖怪と上手につきあう方法
 Ⅰ 社会とともに「進化」する震災
 Ⅱ 前例がない揺れに対処できるのか
 Ⅲ 地震から助かる方法
 Ⅳ どこへいった? 東海地震
 Ⅴ スマトラ沖地震が日本でも起きる?
 Ⅵ 地震予知はできなくても、津波被害だけは防ぎたい
 Ⅶ 四川大地震からなにを学ぶ
 フィクション―201X年夏■ Part 2
 あとがき
 文庫本のためのあとがき
 解説 辻村達哉 共同通信編集委員


本書の解説部分を「島村英紀のホームページ」にリンクしておいたが、本書の目次と、その解説を読むだけで、本書の内容は驚くべきものと言えるであろう。

島村英紀氏は「私の逮捕は、地震予知計画という国の政策を著書で批判したための「国策逮捕」だという評価が定着しつつある。」と自ら書いておられるが、本書は、多くの人に読んでもらいたい本である……と私は考える。


追記 090818

島村英紀氏は、あれだけの目に会っても意気軒昂、本書の出版もそうだが、大いに活躍されている。氏のホームページは内容充実……何でもありの素晴らしさだが、どこに何があるのか……探すのが大変ではある。

 ● 島村英紀の ホームページ

この「地震予知」の問題から「大震法」に至るまで、今月30日の衆院選の政権交代によって、真相が暴きだされ、正常な世界へと変革されることを期待している。


Posted by 秋山東一 @ August 18, 2009 12:19 AM
Comments

いのうえさん、どうもです。
はい、私もそのあたりにハマってしまいました。とにかく、この島村英紀氏のサイトはなんでもあり……でありますね。

Posted by: 秋山東一 @ August 20, 2009 06:52 AM

島村英紀さんのHP内の「不器量な乗り物たち」その1:生活圏編 ・・・にある自動車写真群に魅せられて出られなくなりました。

Posted by: いのうえ @ August 19, 2009 06:31 PM

Fumanchu 先生、どうもです。
看守主義国家……じゃなかった、官主主義国家でございますね。しかし、そんなこんな破廉恥罪でひったくられて、拘置所入りではたまったもんじゃありませんです。

Posted by: 秋山東一 @ August 18, 2009 07:15 PM

ニッポン国も大韓民国・朝鮮民主主義人民共和国・台灣國・中華人民共和国同様、官主主義国なので、「初めに予算有り」「初めに結論有り」で、議会だの大学だのは、コクミンのミナサマに納得し頂くための、方便なのでアリマス。構造屋さんによると「次の関東大震災で超高層がどうなるかなんて、誰もシラナイ。」のだそうですから。

Posted by: Fumanchu @ August 18, 2009 05:28 PM

iGa さん、どうもです。
私は科学者ではないので、まるきり分かりませんが、本当にどうするんだろう。まぁ、地震自体、他人事ではありませんから……どうにかしなくちゃでありますね。
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq24.html

Posted by: 秋山東一 @ August 18, 2009 11:13 AM

kass さん、どうもです。
とにかく「東海地震だけは予知は可能である」というのが大前提ですから、予知できなかった地震は東海地震ではないのです。しかし、本当の東海地震が突然きた時には何ていうんでしょ。その可能性大ですが。
まぁ、30日の衆院選挙で……チェンジせねばなのです。

Posted by: 秋山東一 @ August 18, 2009 10:59 AM

『地震無知連』の記者会見を見ていたら、名誉教授の言う事に、さの言う事に、曰く『それは計算中です。』曰く『それは分析中です』。彼らは絶対解らないとか知らないと言わないですね。
その会見を見ていたら、昔のSFテレビドラマ『宇宙家族ロビンソン』に出てくるロボット・フライデーを思い出した。フライデーも知らないとは決して言わず『それは計算されません。』と言っていた。

科学者を信用できるかできないかの判断基準として、科学者が正直に『解らない』と言えるかどうかですね。何でも解った風に解説する輩は信用ならない。

Posted by: iGa @ August 18, 2009 10:59 AM

先日の大地震を『これは東海地震にはあたらない』とするコメントを聞いていて、「なぜ東海地震にこだわり続けるんだろうか?」と不思議だったのですが、こういうことなんですね。
こんな形で国策捜査が行われているとすると、とんでもない恐怖国家でありますね。

Posted by: kass @ August 18, 2009 09:20 AM