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昭和史 1926-1945

BOOKS

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昭和史 1926-1945
平凡社ライブラリー は 26-1
著者: 半藤 一利

ISBN: 978-4582766714
出版: 平凡社
価格: 945-円(税込)

半藤一利を初めて読んだのは1998年「ノモンハンの夏」だった。それ以来、氏といえばノモンハン……なのである。書店の新刊コーナーに本書を見つけ、その帯に……講演録「ノモンハン事件から学ぶもの」を増補……を見、早々にレジに向かったのであった。

本書は2003年出版され毎日出版文化賞特別賞を受賞した単行本の、平凡社ライブラリーの一冊として新刊なったものだ。「読みやすい通史の決定版」だそうだが、実に面白く読めた。

それは、本書の成立ちが少数の受講者に対する講義(氏は寺小屋と言っているが)、というか授業……その記録であるところに一因ありなのだ。講談のようでもあり落語のようでもありと……、氏がサービス精神旺盛に語っているところに面白さ分かりやすさがあるのだ。


  目次
 はじめの章 昭和史の根底には“赤い夕陽の満州”があった—日露戦争に勝った意味
 第 一 章 昭和は“陰謀”と“魔法の杖”で開幕した—張作霖爆殺と統帥権干犯
 第 二 章 昭和がダメになったスタートの満州事変—関東軍の野望、満州国の建国
 第 三 章 満州国は日本を“栄光ある孤立”に導いた—五・一五事件から国際連盟脱退まで
 第 四 章 軍国主義への道はかく整備されていく—陸軍の派閥争い、天皇機関説
 第 五 章 二・二六事件の眼目は「宮城占拠計画」にあった—大股で戦争体制へ
 第 六 章 日中戦争・旗行列提灯行列の波は続いたが…—盧溝橋事件、南京事件
 第 七 章 政府も軍部も強気一点張り、そしてノモンハン—軍縮脱退、国家総動員法
 第 八 章 第二次大戦の勃発があらゆる問題を吹き飛ばした—米英との対立、ドイツへの接近
 第 九 章 なぜ海軍は三国同盟をイエスと言ったか—ひた走る軍事国家への道
 第 十 章 独ソの政略に振り回されるなか、南進論の大合唱—ドイツのソ連進攻
 第 十一章 四つの御前会議、かくて戦争は決断された—太平洋戦争開戦前夜
 第 十二章 栄光から悲惨へ、その逆転はあまりにも早かった—つかの間の「連勝」
 第 十三章 大日本帝国にもはや勝機がなくなって…—ガダルカナル、インパール、サイパンの悲劇から特攻隊出撃へ
 第 十四章 日本降伏を前に、駈け引きに狂奔する米国とソ連—ヤルタ会談、東京大空襲、沖縄本島決戦、そしてドイツ降伏
 第 十五章 「堪ヘ難キヲ堪ヘ、忍ビ難キヲ忍ビ…」—ポツダム宣言受諾、終戦
 むすびの章 三百十万の死者が語りかけてくれるものは?—昭和史二十年の教訓
 
 こぼればなし ノモンハン事件から学ぶもの

       関連年表
       あとがき
       平凡社ライブラリー版 あとがき
       参考文献


この戦争の時代、そのクライマックスは1941年12月8日の真珠湾攻撃、日米開戦だ。その成功に日本人は酔う。まさしく「国民的熱狂は何をもたらしたのか?」の国民的熱狂……その時、知識人達は何を語ったのか……評論家の中島健蔵は語る「(これは)ヨーロッパ文化というものに対する一つの戦争だと思う」、亀井勝一郎も又、「勝利は、日本民族にとって実に長いあいだの夢であったと思う。即ち嘗てペルリによって………」、それは日本人にとって国民的熱狂そのものであったのだ。

2005年11月19日行われた「吉村順三建築展/記念シンポジウム」で、近代建築史家である藤森照信・東京大学教授の話を思い出した。歴史家として数多くの巨匠、丹下健三、前川國男、吉坂隆正等々にインタビューしたことのある藤森氏は、 各巨匠方に同じ質問を試みたそうだ。曰く「太平洋戦争開戦の時、何を思ったか」だそうだ。
前川は「今までのもやもやがすっきりして、がんばらねば.......」とか、丹下も最初はそれほど感じなかったが、日をおうごとに......と語られたそうだ。皆さんそれなりの覚悟、日本国民としての決意を語られたそうだ。ところが、吉村は異なっていた。「国家がそんな決意をしたなら、私は事務所を始めよう、と思った」と語ったそうだ。藤森は「しん(芯)のある人」と語っていたが、吉村はちょっと不思議な人ではある。

そんな国民的熱狂が、四年も経たずに敗戦という結果をもたらす。本書はそこまでが語られている。

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昭和史 1945-1989
平凡社ライブラリー は 26-2
著者: 半藤 一利

ISBN: 978-4582766721
出版: 平凡社
価格: 945-円(税込)

Posted by 秋山東一 @ July 9, 2009 12:15 AM
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