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戦艦大和—生還者たちの証言から

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戦艦大和—生還者たちの証言から
岩波新書 新赤版1088

著者: 栗原俊雄

ISBN: 4004310881
出版: 岩波書店
定価: 777-円(税込)

岩波新書の新刊である。今さら何故って感じを持たれるかも知れないが、本書の出版の意図は「あとがき」の筆者の言に明らかである。

現役の新聞記者である著者は、子母沢寛が『新撰組始末記』を書くについての取材で「ぎりぎり、間に合いましたよ」と語ったのを引き、60余年前に沈んだ戦艦大和の生還者二十数人に取材できたことを語っている。

1945年4月7日、沖縄への特攻の途次、2時間余りの熾烈な戦闘の末、世界最大・最強といわれた戦艦大和は沈没した。3000人の乗組員の内、生還者は300人に満たない。戦後、多くの資料が公開され、最近では「大和ミュージアム」まで開設された戦艦大和だが、その生還者、遺族から取材によって本書は書かれた。

著者は本書の結語として次のように記している。
「.........未来の人々は大和をどうとらえるだろうか。最新の科学技術を結集した「世界最大・最強」としての側面に注目し、また守るべきもののために散って行った兵士の象徴として、「民族の誇り」ととらえることは可能だ。一方で膨大な国費を注ぎ込んで建造しながら、成功の見込みがほとんどない作戦に投じられた大和を、軍事力増強に国力を傾けて勝算のない戦争のない戦争に突き進んだ時代の象徴としてとらえることもできる。大和は、見る者の歴史観を映す鏡である。」

「美しい国日本」なる、まやかしの文言の主は去っていったが、あの戦争を美化し....新しい戦争を考えるむきが未だ跳梁跋扈する日本、あの戦争をしっかりと見つめていたいと思った。


目次
 はじめに

序 章 誕生
第1章 初陣
第2章 海戦
第3章 出撃
第4章 沈没
第5章 生還
第6章 責任
第7章 遺族
第8章 戦後
第9章 真相
第10章 未来
 
 あとがき
 主な参考文献


「第9章 真相」は、2005年に吉田満の『戦艦大和ノ最期』の記述について起こった論争について書かれている。その真実を知る術はすでにない。

Posted by 秋山東一 @ September 27, 2007 10:25 AM
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