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住まいを予防医学する本

BOOKS , OM/VOLKS HAUS

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1987年、20年も前のことだ。ОM草創、奥村昭雄先生の考案したソーラーシステムの啓蒙普及を目指して、ОMソーラー協会・オーエム研究所を作って世に打って出るという話がふってわいた。

私もその企てに招集された一人だったのだが、その時、草創メンバーの一人であり、その間の事情に詳しい野沢正光氏にちょこっと聞いた時、「そうなんだよ。.......文学青年がさぁ.........」てな話を聞いたのだ。その文学青年が小池一三氏であることはいうまでもない。

小池一三氏はこの二十年間のОMソーラーという潮流、建築運動という側面を持った中小工務店を束ねた活動を担ってきた。又、その展開、その成功の大部が氏の資質、奮闘によることも明らかであろう。その文学青年たる資質、演劇人としての小池一三の力が遺憾なく発揮された二十年だったのだ。
私にとっては、ОMソーラー、Be-h@usの元であるフォルクスハウスの世界を切り開くべくご一緒させていただいた時間であった。

ОMソーラー協会の経営を後進に譲り、氏が独立したご自身の事務所「小池創作所」を設立してから二年、新しい環境の元、大いにご活躍と望見していたが、新しいこんな著作を出された。

「住まいを予防医学する本 —からだにいいことは、だいたい、ちきゅうにもいい」なる、厚さ三センチを越える堂々たるハードカバー、全350頁の大著なのだ。


小池一三氏は、この二十年間ОMソーラーの印刷物、新聞見開きの広告から販促チラシの一片まで、たくさんの技術マニュアル類から、広告用とはいえ教科書と言えるくらいの印刷物をその細部にいたるまで吟味し編集執筆に力を注いでこられた。その氏の集大成というべき著作が本書である。

今までの、住宅・住まいのよき有り様を希求した姿勢はそのまま、健康問題、それも予防医学という観点から住宅を捉え直そうという新しい趣向の本なのだ。

「大きな自然」という静かな語り口で地球環境問題を根底にすえ、「予防医学」の歴史を手短に復習い、そこから「からだの健康」「住まいの健康と安全」「自然力の家」と概論をこなし、「住まいを予防医学する」という本旨に入っていく。そこから具体的に、抽象的に、設計論から住まい方の知恵にいたるまで、今までのОMでの知見を活かした、いかにも小池さんらしい論旨が展開されるのだ。
そして、最後に永田昌民氏の「小さな家だけど、大きく住める家」に辿り着くという構成なのだ。

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この本は非売品である。そして「町の工務店ネット」なる工務店集団から「貸し本」として貸し出される。貸し出し期間は8ヶ月.......そんな、新しい本の流通というのか、情報の伝搬の有り様が模索されている。
本が出版されるという以上に、その本自体を工務店集団のツールとして活かしていこうというところが、小池さんの小池さんたる由縁、面目躍如なのである。

本書の末尾に名を連ねる「町の工務店ネット」の面々、ОMソーラーでお馴染みの顔である。「町の工務店ネット」も、これから、その発展が大いに期待されているのである。

この本も含めて、小池さんの日々のご活躍はブログに。
小池一三の週一回

本書の発行元である「町の工務店ネット」のサイト、本書の目次、本文の試し読みもできる。
町の工務店ネット - www.bionet.jp


追記 070830

ブログ友である ONE DAY のイラストレーター小野寺光子さんが、コメントしてくださった。「........ああ、見てみたい読んでみたい。」、こりゃ、大変......、早速、小池さんに連絡を取ってお送りいただいた。とても気に入っていただいたみたいで、私もうれしいのであります。

ONE DAY: 「住まいを予防医学する本」♪


Posted by 秋山東一 @ August 20, 2007 05:27 AM
Comments

kadoorie-ave さん、どうもです。
そんなにお褒めいただくと、本書の親分、小池さんが「ピンクの豚」となって、空に浮かびます。
早速、手配いたしますので、しばらくお待ちを。

Posted by: 秋山東一 @ August 24, 2007 09:20 AM

「町の工務店ネット」に行ってみたら、「住まいはいのちの箱である」とあってなんだかうれしくなりました。「家っていのちを育むし、いのちがのしみ込んでいるものだよねえ」だなんて友だちと話していたところだったので。
それにしても、この黄色い本は、表紙の文字の使い方といい、二色刷りのイラストの絶妙な線といい、いい本に違いないという期待でワクワクします。ほぼ当たるのであります、そういう期待はいつも。試し読みの文章もわかりやすく、ああ、見てみたい読んでみたい。

Posted by: kadoorie-ave @ August 23, 2007 09:24 PM

『町の工務店』が『町の図書館』となったような、『おもしろい』アプローチができそうですね。
『家守り』のかんじもでていて、親近感がわくようなきがします(なにかあったら、近くの○○医院...なんて感じでね、笑)。

Posted by: たかさん @ August 21, 2007 12:01 AM

予防医学に喩えるのは面白いですね。
住まいの・・と考えるとき、治癒=修理、予防=メンテみたいに単純に考えてしまいますが(文才のない故か(笑)

Posted by: app @ August 20, 2007 02:08 PM